illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

おれのくーちゃん(雨の日)

アパートの下まで来て、窓辺を見上げると、くーちゃんがいつになく窓に顔を寄せておれを見つけてくれた。雨の中「くーちゃん」と声をかけ、階段の踊り場で振り返って窓をみる。くーちゃんは増々ぴったり窓に顔を寄せておれをじっと見ていた。

「くーちゃん」

おれは急ぎ足でドアを開けた。「くーちゃん」

朝、出掛けに、カリカリをいつもより少なくして置いてきたことに気付いてはいた。くーちゃんはあまり聞いたことのない、高い、甘えるような不満をいうような声でおれを叱った。「くーちゃん、ごはんすぐに出すからね。ごめんね」「ふにゃあ」

カリカリと、ゼリー状のまぐろを食べたくーちゃんはいつものくーちゃんに戻った。くーちゃんは育ちがいいので、ごちそうさまの「にゃーん」をいうことができる。おれの脚にすりすりをして、部屋をぐるっとひと回りした。そうしてキャットタワーの1F部分に落ち着いてちょこんと座った。

おれは、くーちゃんが愛や恋や夢や希望のためでなく、おれを実用本位で見てくれているらしいことをうれしく思った。おれが役に立つ(あるいは立たない)下僕でいる限り、くーちゃんはおれのことを思い出してくれるだろう。