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illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

具志堅用高(18)の喫煙の件

読んだ。

www.hochi.co.jp

具志堅用高の圧倒的な強さ、ラッシュ、ぶんぶん振ってかわす頭の動きを見たことがないタレント風情に、何をいっても始まらない。また、香川照之には香川照之の思惑と台本があったのだろうが、あんなおっさんむちゃくちゃ強いに決まってるのである。対戦相手はいつもボコボコです。


蘇るカンムリワシ伝説 具志堅KO集

おそらく、俺(1973-)物心ついて初めてみたボクサー。晩年、アルフォンソ・ロペスあたりからだったから往年の強さとは違っていただろう。それでも具志堅というのは防衛して当たり前という感じだった。柔道の山下(泰裕)とか。あるいは北の湖千代の富士。80年代初めというのはすごかったんだぜ。

*

その具志堅、高校3年生でインターハイたしか前日に合宿所で煙草を吸っている。山際淳司が「逃げろ、ボクサー」(大橋克之)、じゃないほう、「ザ・シティ・ボクサー」(春日井健)に書いていた。沖縄から出てきた純朴な具志堅少年に煙草を勧めたのは春日井健である。理由は、具志堅が「あのね、おにいさん、ちょっとでないんですよ」「何が」「緊張して、おなかが」「これ試してみなよ」。トイレに向かう具志堅。勧めるほうも、吸うほうも、実にすばらしい。

*

好きなエピソードなのだけど、引用はしない。すまない。

引用すると下手をすれば山際さんの本を手にしないままにどこぞの編集者がウィキペディアに引く可能性があるからだ。アフィリエイトを狙っているのではない。たとえば、具志堅を語るのなら、石垣の記念館はもとよりターミナルで具志堅の銅像と抱擁しあうべきだし、基本書のひとつとして「スローカーブを、もう1球」あるいは「逃げろ、ボクサー」を買って読むべきだからである。

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

 

自らに、鞭打つために、ここで宣言をする。

「逃げろ、ボクサー」の大橋克行さんとコンタクトがとれた。「逃げろ、ボクサー」の続編が書きたい、山際さんなきいま、残念だけれど僕しかいないようなんですとお伝えしたところ、快く取材に応じてくださることになった。

GWに企画書を整えて、横浜に通い始めるつもりだ。春日井健さんのこともご紹介いただけるかもしれないとのことである。春日井健、めちゃめちゃ格好よくて、強かったんだぜ(1980)。なんという僥倖。もちろん、発表場所はここ、はてぶだ。ご本人の承諾は得る。お兄さん(克行さん)はいいとしても、しかし、弟さん(秀行会長)が果たしてなんというか。

ぼく、<逃げろ、ボクサー>の弟です。

山際淳司「逃げろ、ボクサー」のあとがきの記憶から引用

逃げろ、ボクサー (角川文庫)

逃げろ、ボクサー (角川文庫)

 

 

dk4130523.hatenablog.com

有名になりたいのでも、印税がほしいのでもない。そんなものは、読者であることの至福に比べたら、吹けば飛ぶような将棋の駒である。本は、だれかが仕込んでくれたものをおいしくいただくから楽しい。それをなぜ書くのか。ホマレ姉さん(id:homare-temujin)が、俺が受賞した暁には料理をふるまってくださるという夢を見たからである。

*

それに、山際さんは大橋克行さんに関して予言を遺している。あれから25年の軌跡を、俺はとにかく知りたい。スタイリッシュに、彼は逃げ切ることができたのかどうか。きっと、出来たのだろう。でも、どうやって?

 「兄きはどうしてる?」
 ぼくは秀行に聞いた。
 「元気でやってますよ。子供も生まれてね」
 秀行はいった。
 そのうち、リングサイドで大橋克行に会う機会があるかもしれない。かつてバンタム・ウエイトでリングにあがっていた男はミドル級の体重になっているだろう。それでもきっとかれは、今でも現在の自分の生き方に、かつてと同じこだわりを持ち、自分なりのライフ・スタイルを貫き通しているにちがいない。

山際淳司「あとがき」にかえて(角川文庫『逃げろ、ボクサー』P.252-253)

(だいたい、「そのうち」が来る前に山際淳司が病気になるからあかんのや。泣く)

俺のほかに知りたい人がいて、書き記してくれさえすれば、俺は幸福な読者のままでいられた。25年待った。最後の数年は熱烈に待った。三島ではないけれど、もう我慢の限界である。読者の至福を手放しても、俺は、会って、話が聞きたい。紡いでみたい。しょうがないだろ(なんという幸せ)。

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津田真男、三宅豊、松田明彦、大橋克行、春日井健、具志堅用高…みんな、俺の、ヒーローだった。当時は、アマチュアスポーツマンの熱量を、等身大のことばで紡いでくれるライターがちゃんといたのである。80年代は、ちゃらちゃらした時代だったようにいわれるけれど、実は、意外にまじめだったのだ。だれ兄弟とはいわないが、まじめにやらなければ、世界王者になど、本来はなれるわけがないのである。

ちょっちゅね・コム - 具志堅用高記念館

追記

これはいい知恵袋。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp