illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

読書の感想なんて年端の行った大人のぼやきに過ぎない

私は読書感想文反対派の急先鋒です。触発されました。

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ちなみに、モカよりもキリマンジャロが好みです。

それで思い出したけど、ヘミングウェイキリマンジャロの雪」初めて読んだときはびっくりしました。TOTOのAfricaって感じです。


Toto - Africa

なのですが、最近では北方謙三が解説を行っているらしい。もちろん「あの阿呆が」という含みです。そこで、もしヘミングウェイを手にする機会があれば「老人と海」を、そしてその福田恒存の解説をぜひ読んでみてください。あれほど平易簡明なアメリカ近代文学史を僕はみたことがない。あれがすべてじゃないけど、通ったほうがいい。

老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)

 

ところで牧野有通先生、20年ほど前に試験日を1日間違えて寝飛ばしてあわてて電話をかけて、フルーツ詰め合わせと急ぎ記したヘミングウェイ論をお送りしたところ単位をくださってまことにありがとうございました。あのときお約束したように、先生の論文とメルヴィル「白鯨」は、あれからずっと旅先で繰り返し読んでいます。あの事件がなければメルヴィルなんて読まなかったです。僕は破戒したクリスチャンですが聖書を通っておいてよかったと思います。メルヴィルありがとう。

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ウィキペディアの「白鯨」が淡々としていながらむやみに面白いのですが、先生とお弟子さんの犯行でしょうか。

白鯨 - Wikipedia

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読書感想文は、国語とかいうのを「教える-教えられる」関係の中にいるうちは、わいせつです。心持ちが。読んでもらう、評価されることを意識して書くでしょう。そんなのだめなんですよ。優等生はより優等生的に、書くようになってしまうから。書けない人は、不必要に頭を抱えるから。

別に出さないでいいんです。あんなもの。そして書けちゃう人は、迎合するくらいなら、書かないほうがいい。わたくしは小2から高3まで読書感想文コンクールの常連でしたが、毎年だいたい読まないで書いていました。それでも、ポイントをおさえれば県のコンクールくらいまでは行きます。自慢ではなくて、その程度のものです。母数が少ないんだから。

だいたい本を読んだくらいで通過儀礼や成長物語や心境の変化が起きるわけがない。その起きるわけがない通過儀礼を書くとなぜかほめられるんです。実に気持ちが悪い。本が好きになるわけでも、文章力が上がるわけでもない。本なんてガキのころから憎むほど読んでます。効能は、友達の分を代筆して、レポート代筆ビジネスの可能性を知ったくらいです。僕が、本気になって回想して読書感想文を書くのは、たとえば、次のようなときです。

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ガキ(自分のことをいっています)に書けるわけがない。だいたい、提出した読書感想文に親身に赤入れしてもらったことがありますか。ないでしょう。出しっぱなしなんです。国語教師も、まず、有望な子の作文以外は読みません。毎年、ガキの書くものなどうんざりだと思うのがふつうです。でも、入賞すると学校の名誉とやらになる。

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「むしばがすっぽん」。

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1979年か80年の某県の2位に入った読書感想画の題材がこれでした。もう、歯医者に行くのがいやでいやで仕方がない。その子供ながらの葛藤と、衝撃的なストーリーが、絵心を触発した。全身全霊をかけて不条理を絵筆にクレヨンに、トンボ鉛筆に、乗せたといっていい。このときに入賞しなければ、僕の人生は変わっていた。味を占めた俺は、翌年から、狙いに行くようになる。

まさか、手痛いしっぺ返しが来ようとは。

時は過ぎ、15年ほど前、病床の母親から、

あれは、あなたの作文の中でほんとうによく書けていた。ほかは、分かったようなことを並べているけれど、だめね。賞をもらったかどうかなんて関係ない。自分でもそう思うでしょう。そのことを、忘れてはだめよ。あなたは、この地で生まれ育った、歯医者さんがきらいな、ただの男の子。

そう諭されたことを、俺は自らの戒めとしている。7歳から18歳までの俺の情操を、正解のないことと十二分に知りながら、彼女は複雑な思いで黙ってみていたのである。

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で、なんだっけ。読書感想文。やめちゃえよ、あんなくだらない制度。読書の感想は、年端の行った大人が、だれに読まれることを期待するのでなく、酒を飲み、ねこちゃんを撫でながら、ぼやくもの。

dk4130523.hatenablog.com

希代の本読みであらせられるところのすが秀実が、それに近いことをいい、行っているのだから間違いない。ちなみに、北野武が何かで、小学校高学年以降に写った自分の写真には「もてたい」という自意識が見えて「いやだね」といっていた。そんな感じです。