日めくり百人一首の第5回。猿丸太夫。名前で損してるかもしれないランキング2位。1位は蝉丸。
元歌
#005
おく山に紅葉ふみわけなく鹿の声きくときぞ秋は悲しき
猿丸太夫
単語に切る
おく山|に|紅葉|ふみわけ|なく|鹿|の|声|きく|とき|ぞ|秋|は|悲しき
品詞分解
おく山(名詞)
に(格助詞)
紅葉(名詞)
ふみわけ(カ行下二段動詞「ふみわく」連用形)
なく(カ行四段活用動詞「なく」連体形)
鹿(名詞)
の(格助詞)
声(名詞)
きく(カ行四段活用動詞「きく」連体形)
とき(名詞)
ぞ(係助詞)
秋(名詞)
は(係助詞)
悲しき(シク活用形容詞「悲し」連体形。「ぞ」の係り結び)
知識事項
・奥山とは、「人里を離れた山の中」「深山」というお約束のフレーズ訳があって覚えておくと便利。たんに山奥ではなく、人里を離れたところが訳出/採点上のポイントです。
・連体形が多い。「なく」「きく」はそれぞれ「鹿」「声」を修飾するからふつうの連体形。ちなみに体は体言(名詞)の体。それに対して用というのがあってこれは活「用」するものという意味。近代史で「中体西用」というときはまた違う。何のこっちゃ余談。
・「ふみわけ」の主語はだれであろうか。人=詠み手、鹿、の2説がある。が、これはふつうに素直に読んで鹿ではないかな。また、鹿の鳴き声が聞こえなくても、山奥とそこを歩く鹿に、想像力を働かせたという感じもする。
・「なく」は、ただ鳴くのではなく、求愛です。鹿は雄も雌も鳴くそうです。ここでは、読み手が猿丸太夫(男性)だし、雄ではないかと。
・「かなし」は、愛し(いとしい)系と、哀し/悲しい(切ない)系がありますが、この歌では切ない、でしょう。
解釈
人里を離れた深い山。紅葉をかさかさと踏み分けながら、きゅーきゅーと求愛の声をあげる雄鹿の声を聞くと、いかにも秋という感じがして切ない。
別段むずかしいところのない歌です。視覚効果(深山と紅葉と鹿)はもちろん、かさかさときゅーきゅーの聴覚の対比を掴んでおきましょう。それよりも、鹿の鳴き声をYouTubeで確認しておきましょう。