はなちゃん
賢くてかわいいねこのはなちゃん
お願いごとがある
くーちゃんが今週末にうける手術のことだ
はなちゃん
君もシェルターさんにいるときに同じ手術を受けたことと思う
ねこちゃんの避妊手術
それにはいろんな角度からいろんな理由をつけることができる
僕の結論も決まっている
でも
どうしてもくーちゃんにうまく説明することができない
毎晩いつの間にかロフトのベッドにやってきて眠り
またいつの間にか降りていき
そしてまた朝の決まった時間になると
にゃー
5時30分
手術を受けた後
くーちゃんはもう二度と僕と一緒に寝てくれないのではないかと
それより何より
麻酔をかけるとはいってもメスを入れるのだから
痛くないはずがないと
事情もわからずに一泊二日を病院で過ごす間の不安な気持ちだとか
どれひとつ
僕にはうまく伝えることができない
伝えられないのだから
くーちゃんを
その間ひとりになるはなちゃんを
安心させてあげることなど
できるはずもない
こういうところは
小さいころから僕は
なにひとつ変わっていない気がする
同じように
生命の厳粛を前にした緊張と
それをすり替える論理と
くーちゃんを抱いたときの暖かくて柔らかいもふもふと
それらは一緒になって
帰りの東西線で
僕は頭を抱えた
はなちゃん
くーちゃんが少し留守にして帰ってくるまでの間
待っていてくれるかな
少し寂しいと思うけれど
そして
くーちゃんが出かけるまでのあと数日
君たちだけに通じることばで
くーちゃんに説明してあげてほしい
窮屈なエリザベスカラーのことは
せめて僕がどうにかするつもりだ