仕事のことが頭から離れなくて、浅い眠りから目を覚まし、ベッドから上半身を起こして壁の時計を見ると2時16分。そのままの体勢でしばし固まる。視界の斜め下のほうをこちらに向かってくるシルエットがあって、「にゃーん」と聞こえる。
「おいで。寒くない?」身をずらし、ベッドのくーちゃん側を空けて、その場所を軽く手で叩く。
辺りを少し伺った後で、くーちゃんはひらりと飛び乗り、僕が布団でかまくらを作った中に入ってきてくれた。暖を取る背中を撫でて、「好きだよ」と声をかける。僕のおなかにすっぽりぴったりと背や尻を寄せてくれて、落ち着いたところで今度は頭、首筋、額を撫でてあげる。「ありがとうね、くーちゃん」
満足したら、出ていった。もう、かれこれ40数年前に、立場を入れ替えて、似たことをした、男の子の姿が浮かんだ気がした。