これまで誘われる機会のなかった女性社員のグループから昼食に誘われた。
なんとなく、そんな気分だったらしい。「なんとなく、そんな気分なんです。だめですか」と尋ねられたので、だめの理由がない、行こうかと、論理回路で返すだめなおれである。
*
「メンヘラさん、休みの日は何を」
「仕事」
「そういうところがだめ。仕事以外で何してはるんですか」
「うーん」
「じゃあ訊き方変えます。(中華のお店だったこともあり)横浜の中華街に行ったことはありますか。ありますよね。私たちに行けないような高くておいしいお店知ってそう」
「ある。そういえばおれには横浜の崖のそばに住んでいる友だちがいるんだ」
「へえ」
「その友だちのところにちょくちょく出かけるんだけど、たいてい彼は留守にしている」
「あはは。おかしい。会えないんですね」
「うん。それで、中華料理を食べる気を失せて」
「はい」
「そのまま帰ってくる」
「なにそれー。寂しいですね」
「それがそうでもない」
「?」
「文通してるんだ、彼と」
「きゃー、急に古風でロマンチックな話。手紙いまないんですか」
「あるよ。あるけど、読めないんだ。見えないインクで書いてある」
*
去年のいまごろは、物語を書き上げた後、地中海の気候のいいところで、ゆっくりと野垂れるのがおれらしいと、物語を書くことと、旅のプランを練ることが頭の大半を占めていた。
生きていて、よかった。血液グループ先生が、よよん君のことを自分ではその関係(性)、結びつきを決して認めたがらない、まして、よよん君には面と向かって口にはできない気持ちが、いまならよく分かる。そんな気がする。
*