普通の人:
1本の線を引くと、そこに1本の線があることが伝わる。
玄人はだし:
一体どんな手つきでその線を引いたんだろうとうならせる。
玄人:
1本の線でそこに平面や空間を感じさせる。
名人:
この人の余白はどれだけ広いんだと頁をめくる手が止まらない。
あらためてですけれど、あこう浪士さんの余白にはどれだけ釣果がうずたかく積まれているのかと、もうね、ほんとにお見事。
社会保険労務士で独立したての浪間君(仮名)は、食えぬからと周囲の独立開業阻止の包囲網を掻い潜って今は晴れやかなところです。
かなりの良い会社で、それなりの収入が有ったのですが、どうしても独立開業がしたい、結構な年端で苦労する事もあるまいと言う周囲には目もくれず、早まったのです。
周囲の目論見どおり、なかなか定まりきった社会の枠には入り込めません。
一時は労働基準監督署の臨時職員ということに成ったのですが、これも目出度く雇い止め、今は何とか食いつないでおります。
酷暑の釣り師 「おとなしく白状してもらおうか」 - 備後「あこう浪士」 釣り場の周辺
8/27現在の新しい記事でいうと、ここ。思わず膝を打って、けらけらと大笑い。
凡百のフリーランス論、独立開業論とは異次元。ここだけ引用しても味わいが伝わらないでしょ。そこがいいんですよ(笑)。浪間君の線が引かれると、ああ、浪間君とあこう浪士さんの関係はどんなのだろうなあとか、浪間君、どんな背格好と身支度で釣りに出ているのだろうとか、否が応でも想像が膨らんでしまう。
つらつらと、読み進める中にこういうのが放り込まれると、たまらにゃい。そもそも、タイトルが「釣り場の周辺」というのが、おぬし、ワルで御座いますな。
あとこの、いろいろ作ったりシリーズ。病膏肓に入る。あれ、ちがうな。いいのかな。
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愛情があふれて、あふれた筆で一本の線を引いてみる。ネタは尽きない。浪間君の暑い夏がほのかな手触りとして伝わってくる。文体も、いえ、正直、初めて読んだときにはよくわからなかったです。レベルが高すぎる(笑)。俺、かなり本読んでるほうなんだけどなあ(笑)。
でも2度3度読んで、飄々とした味わいは、これは手練れの犯行であると。ウェブで読める同時進行身辺雑記の中で、最高級のひとつではないかと。このような陳腐な評を、あこう浪士様ご本人はお嫌いかもしれませんが、しかしこの読者数は何をか語らんや。はてなの読者は、さすがに目が高いなあと感じます。
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若者よ、ノウハウを語るな、PVをほしがるな、とは申しません。まあ語りたいんだろう。語っておけ。だがな、おしまいに、手元に残るのは、どれだけその対象を惚れぬいたか、その、のっぴきならない愛憎と諦めと、それから、洒脱な文体。
対して、ノウハウものは直線的にすぎます。そんな、誰が書いても同じような針に引っかかるのは上っ面だけ。第一、お前ら1本の線だって、ちょっと長くなるとまともに引けねえじゃあねえか。
同じころ、うまい鮟鱇は、海の底を悠々と。
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ちなみに、浪士様、こちらはお読みになりましたか。池沼マスオ先生も、相当のワルでいらっしゃいます。
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夏の読書感想文を書いたところで、久しぶりに、釣りに出たいなあ。