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illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

日めくり百人一首 #001 秋の田の仮庵の庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ

はじめに

突然ですが日めくり百人一首やります。

やっぱり日々の暮らしの中に古典的な要素を入れていかないとだめになってしまう体質。それと、近い将来、MeCabとなんちゃらDicとTensorFlowでごにょごにょして、古語の下訳か品詞分解かをやらせる頭脳を作りたい。高校大学時代に国語文法は相当に気合を入れてやったので、20数年が過ぎたいまでも知識は残っている、はず。その自己検証を兼ねて。

1日1首で3か月強。間に受験古文のノウハウも挟むつもりなので、いちおうの目標として4か月完結。百人一首の品詞分解と解釈が揺らぐことなく自力で出来るようになれば、センター試験の手前までは来られる。それから、歌物語でも、新古今でも、三大随筆でも、源氏でも、行けばいい。

元歌

#001

秋の田の仮庵の庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ
天智天皇

単語に切る

秋|の|田|の|仮庵|の|庵|の|苫|を|あら|み|わ|が|衣手|は|露|に|ぬれ|つつ

品詞分解とは(独自定義)

あるテキストを、単語に分解すること。さらに、その分解した単語を、一定の形式で文法的に説明すること

品詞分解後

秋(名詞)
の(格助詞)
田(名詞)
の(格助詞)
仮庵(名詞)
の(名詞)
庵(名詞)
の(格助詞)
苫(名詞)
を(格助詞)
あら(ク活用形容詞「あらし」連用形語幹)
み(接尾語)
わ(代名詞)
が(格助詞)
衣手(名詞)
は(係助詞)
露(名詞)
に(格助詞)
濡れ(ラ行下二段活用動詞「濡る」連用形)
つつ(接続助詞、反復継続)

受験生向け知識事項

・(古文)  「が|の|を|に|へ|と|より|から|にて|して」は、格助詞
・(現代文)「が|の|を|に|へ|と|より|から|や|で」は、格助詞。「や」は係助詞もある。いずれそのうち。
・古文でも、現代文でも、「は」は格助詞ではない。係助詞です(頻出)
・「つつ」は接続助詞
・「○○を△△(形容詞の語幹) み」の「み」は接尾語で、訳し方は「○○が△△なので」(頻出)
百人一首では、ほかに「瀬をはやみ」=川の流れが速いので、がある。百人一首以外では「山深み」(式子内親王。実にすばらしいお歌です)など。
・形容詞とは何か、語幹とは何かは別途。
・「わが」は、古文では「わ」「が」と2単語に切る。現代文では一語の連体詞「わが」。
・秋は陰暦の7~9月。陰暦では、春=1~3月。夏=6~8月。秋=7~9月。冬=10~12月。
・陰暦と太陽暦の対応はここでは触れても仕方がないので後ほど。
・下一段か下二段かで万一迷ったら、ほぼ間違いなく下二段。下一段は、「蹴る」しか出題されないと考えていい。

解釈

原則として、まず、余計な語を補わない。そのまま、現代語に置き換える(大野晋丸谷才一説)。

秋の田の稲刈り仮小屋のむしろの目が粗いので、私の袂は(夜)露に濡れているばかり

・露は、夜番であると読むのが妥当であるため、夜を補い夜露とするのが現代人には親切。

・また、古代人がしくしく泣くのは夜でなければならない。

技法

・句切れなし
・格助詞「の」が多くてリズムがいい
・「かりお」「いお」が韻を踏んでいる
・「かりお」「刈穂(かりほ)」「仮庵」が掛詞
・「○○を△△み」が用いられている
・「あ」音が多くて明るい(前半部)
・後半部は「う」音が出てきて少々胸が苦しい

異端説

恋歌が好きな定家の撰ゆえこれは恋の歌と詠まれることを期待していてもおかしくない。つまり、秋の田とか仮庵とか実は心象風景か借景で(歌い手には本質的な意味はなくて)、全体としての意味は、

今夜もあなたが恋しい。寂しい。すきま風。泣きぬれています。しくしく

西野カナか)である。

この立場でいけば、「苫をあらみ」までが、序詞的となる(序詞についてはまた別途)。序詞というのはおまじないのようなもので意味はない。その伝でいけば、侘び暮らしの農夫を思う天皇のお心、とかいう解釈は俺は好きじゃない。農夫が夜番の合間に恋人を思って泣いて歌う(なんてすばらしいんだ)。定家ならそっちに反応して不思議はない。ちなみになぜ夜番をするかというと刈り取った稲が獣に荒らされないため。結もやいの古層である。

作者について

もとは詠み人知らず。天智天皇中大兄皇子だった人。あとは日本史の知識なので古文的にはどうでもよい。

参考文献

古文解釈のための文型の公式 (国語征服シリーズ)

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 復刊してけろ。

古典文法質問箱 (角川ソフィア文庫)

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非常によい。

原色小倉百人一首―古典短歌の精髄をカラーで再現 (シグマベスト)

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鈴木日出男先生も亡くなったとは、90年代も遠くなりにけるかな。