すみません、勝手に宣言して、許可を得ないうちに、やりますw
がんばり入道 『嬉遊笑覧』より - うきよのおはなし~江戸文学紹介ブログ~
あの、私、在野で中世古文をやっておりまして、たまにその、北見花芽 (id:KihiminHamame) さんの紹介されたものを、忠実訳を行う、品詞分解する、岩波古語辞典から薀蓄を引く、つまりその勝手コラボしてよろしいでしょうかw
2017/12/31 12:21
ひっじょーうに面白いw 吉行淳之介の好みでせうこれは。わいの出番や。
がんばり入道
又小児の諺に除夜に厠にてがつぱり入道ほとゝぎすといへるも厠にほとゝぎすを聞を忌ることよりいひ出しとみゆ
〔好色徒然草〕むさしの国にがんばり入道とかやいふ者のむすこ美男のほまれ有て女あまたいひわたりけれど此男若衆をのみ喰ひ更によねのたぐひをくはざりければかゝることかきたる者俗に有べからずとて親出家させけり
此戯文も諺をとれるかかんばり共いふ眼張にてをそろしけなるものを云ひてほとゝぎすを怖(オト)す意なるべし
訳すよ。北見花芽さんのところはご自身記していらっしゃるように【ざっくり現代語訳】。私は、えへん、中世古文命である。その知見を今焉んぞ生かさざるべき。もちろん江戸古文は違うんだけどさ。いいじゃねえか。固いこというな。ちょっとはおまけするからw
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がんばり入道
それからまた、子供(向け)の諺(、教訓)に、大晦日の便所で(大晦日に便所に行って/行ったら)「がっぱり入道ホトトギス」と唱えるというのがあります。これも、便所でホトトギスの(鳴き声)を聞くのは(縁起が悪く)避けたほうがいい[*1]というので、そこから(誰かが)いい出したことと思われます。
[好色徒然草]武蔵国の、がんばり入道某の息子、男前の誉れ高く、女が放っておかない。けれど本人は若衆の尻にばかり興味が向いて、娼婦にすら一向に手を出そうとしない。それだもので、「こんな、男として(の要が)欠けた[*2]者は俗世に置いたままにしてはよくない」と、親が出家させてしまいました。
この戯(ざ)れ話(は/も)、冒頭の諺から着想を得たものでしょうか。(がっぱり/がんばりは、)「かんばり」ともいいます。私(筆者として)は、眼(がん)を見張る(はり)と、いかにも怖そうなものを言葉に出して、ホトトギスを恐れさせるのが本意ではと、思います。
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[*1]ホトトギス(1)鳥の名。初夏に鳴き、その声が人の叫び声のように感じられ、人恋しさを誘う。古来、冥府の鳥とされ、橘・蓬・菖蒲など、不老不死伝説・復活伝説に於ける生命の木や草と関係して使われることが多い。【岩波古語辞典補訂版P.1200】
[*2]ことかけ【事欠け】。必要なものが不足する。不自由する。【同P.514】
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もうひと声、言及したいこともあるのですが、禁欲します。大晦日に子供に雪隠でおまじないを唱えさせるというね。ひっじょーうに、面白い。しかし、その面白さ、豊かさの源泉を、きょうは大晦日、分析的態度によって言語化したくないのであります。
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すみません、北見花芽さん、たまにやります、やらせてください。いや、そういう意味ではなくて、訳と補注をですね。がっぱり入道ホトトギス!
みなさま、よいお年を!