「歴史を感じる場所」 #地元発見伝
茅ヶ崎市, 神奈川県
地元の魅力を発見しよう!特別企画「地元発見伝」
少し前の写真を整理していたら出てきたので紹介したい。
右奥に見える幾何学的なフォルムが印象的な日の当たった白い建築物は何であろうか。
迷える子羊たちは年に数回、場合によっては隔月くらいで気持ちがやさぐれると茅ヶ崎行きの電車に乗り、南口の階段を下ってうなだれて長い舗装路を歩く。社会落伍者のポケットにはカミュの「異邦人」などが忍ばせてあることだろう。項(うなじ)に暑い盛りの日差しを浴びながらおしゃれな住宅街とカフェの街を歩む。それは遙か昔にシジフォスが登った坂に通じるかもしれない道であった。
そのままもうちょっと道なりに進んでおくれ。迷ったなら茅ヶ崎ゴルフ倶楽部を目印に進めばたどり着くだろう。
道を誤ると素敵なこっち側に出る。
正しいルートをとれば、そこには生と死をちりばめた瀟洒な白い狭き門が待ってくれている。「生」と叫びながら入りたいところであろう。近所迷惑になりかねないのでここはぐっとがまんである。嗜みである。
インターフォン鳴らすと出迎えてくれそうで切ない。それにしても吸引力のある丸文字である。
常設展と企画展をやっている。
玄関をくぐると秋元キャパ啓一が撮影したベトナムの戦地をくぐり抜けた開高大兄の放心の一枚が巨大なタペストリーとなって迎えてくれるのだが、どんな罰当たりでも神社のご神体を撮影しないように大兄の前に頭を下げるのは本物を前にしていなくてはならぬ。じっさいあまりの神々しさに写真を撮ることを放棄してしまうほど。
展示のひとコマを許可をいただいて1枚だけ撮影した。寂しくてもここに来れば懐かしい顔が並んでいるから大丈夫(何がだ)。
映像資料もあって「あの人に会いたい」などいろいろ流れている。書斎もガラス越しに覗き見ることができる。「壁のルアーに触れてみたい」「なんだあの何種類もの分厚い事典類は」などと嘆息しているとご同輩が進んでくるので、話しかけられないように足早に逃げる。
展示から書斎を経て小庭に抜けると、ベンチとテーブルがある。そこには子羊たちが寄せ書きをするノートが用意されていて、おっさんたちの魂がつかの間の憩いを求めてポエムを献じているのを「俺はこの人たちとは違う」といいながら読み込む場所だ。至福のひとときである。ちなみにポエムは開高記念館のウェブサイトで選りすぐり公開されてしまうので注意されたい。
(´-`).。oO(俺のもある。どうしてくれようかw
以下はYouTubeのコメントでレポーターに辛い点がつけられている動画だが、映像としては雰囲気をよく伝えてくれていると思う。
生前の書斎もそのままに・・貴重な資料も!「開高健記念館」 - YouTube
さて、心ゆくまで嘆息したら再びうなだれて茅ヶ崎駅に戻ろう。きっと心なし饒舌になっているはずだ。あまりひとりでしゃべりすぎると茅ヶ崎警察のお世話になるからその点は互いに気をつけたいものである。
ちなみに大兄の墓所は鎌倉円覚寺にある。同じ鎌倉の妙本寺には田村隆一の墓所もある。続けて墓参りと献杯を済ませ、その足で神奈川近代文学館に足を伸ばすのが少し前の俺の定番コースであった。巡礼には紫陽花、紅葉、桜、灼熱の夏、四季を問わない。
(追伸)この記事のタイトルの意味はボジョレーの会(※2013年度開催の案内注意)で参加者に尋ねるときっと楽しく語ってくれると思う。Googleに尋ねてもかまわないが語りを引き出すのがおつであり功徳というものであろう。ひょっとしてボジョレーを傾ける群衆に埋もれたおっさんの1人は俺かもしれない。
(追々伸)たまに玄関先で来た道を振り返ってみるといいことがあるという黙示かもしれない。