―おお、ゆうしゃ下僕よ! はなちゃん姫をむかえて1ねん5かげつになるのに ゆびの2ほんもふれられぬとはなさけない。
「いいんです、王様。僕ははなちゃんを愛していますから。」
1
―ほんとうかの。そのこころにいつわりはないというのか。
「ありません。」
―むりせんでいいのだぞ。わしもわかいころは。
「王様もあったのですね。」
―うぉほん。そんなはなしはしておらん。あれでなかなか、はなちゃん姫は手ごわかろう。
「たしかに。てごわいなんてものじゃないですね。」
―どうじゃ下僕よ。わしとそちのなか。ここだけのはなし、ほんとうのきもちをおしえてくれぬか。
「…」
―そのほうが姫をあいしているというきもちはむろんしんじておる。じゃがのう。
「じゃが?」
―それとむねのうちとはべつものじゃ。いろいろとおもうところがあっていいのじゃて。
「王様もお妃さまに対してそのようなことがおありでしたか。」
―うむ。わしも、妃にも、それぞれにあるのじゃ。そのほうはどうじゃ。
「あれですよ。」
―あれとは。
「だいたいですね、ちょっとかわいいからって、シャワーから出る下僕をわざわざ待ち構えてシャーするとはいかがなものかと。」
―うむ。そうじゃのう。
「僕を試すんです。」
―ためすのか。それはおとことしてきもちのいいものではないのう。
「距離をですね、こう、じわじわとためて、近づいてきて、ぎりぎりのところで僕のことをじっと見て」
―ほう。それから。
「シャーですよ。シャー」
―それはせつないのう。
「部屋のどこにいても僕からいちばん遠い距離を選んであるきますからね。どういう計算をしているのか。僕を中心に見立てたら、はなちゃんは正確な円弧を描きますよきっと。」
―きらわれておるのか。
「おそらく。いや、きっと。まず間違いなく。」
―ふぉっふぉっふぉ。
「笑いごとじゃありませんよ王様。まったくもう、はなちゃんめ。」
2
―はな姫、お聞きになりましたかの。
「はいにゃー。」
―おとこというのはかくなるいきものゆえ…
「ぞんじていますにゃー。」
―これからもけっしてはだを、うぉほん、その、ゆびいっぽんたりともゆるしてはいけませんぞ。
「はいにゃー。」
―おとこはりそうのためにはきれいごとをいうのです。
「はいにゃー。」
―りそうがてにはいったとたん、さまざまなどろどろをかかえ、それをおくびにもだしません。ゆだんはなりませぬぞ。
「はいにゃー。」
―しかし姫。
「なににゃ?」
―下僕はあれでなかなかみどころのあるじんぶつ。
「シャー」
―おきらいなのですな。
「にがてにゃー。」
―いまのおことばはないしょにしておきましょう。下僕どのがしったらうろたえますぞ。
「はいにゃー。」
―姫さま。
「なににゃ?」
―下僕どののことをせつにおたのみもうします。
3
(下僕)…zzz…
4
*
はなちゃん明日で1年5か月です。ありがとうね。