illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

【業務連絡】黄金頭さんアンソロジー第1弾 申し込み締め切りました

業務連絡です。

黄金頭さんアンソロジー第1弾のお申込みを締め切りました。これまでにお申し込みをいただきメールで返信「了解しました」「承知しました」「にゃーん」等を受領されている方は全員当選、間もなく手続きが始まります。

この先の流れは次の通りです。

  1. 代金お振込みをどうぞよろしくお願いいたします
  2. 1/27:当方より送付担当のこもちししゃもさんに船橋グッズを発送
  3. 1/31:入金確認順に、送付開始(本(+付箋)+船橋グッズ)
  4. 2/1:早い方でブツがお手元に届きます

そしてみなさまご自身のブログ等で感想をお寄せくださると師匠の励みになるかと思いますので(忖度)。

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電子書籍についてですが、上記の発送完了後に改めてお知らせします。これは実体をお申し込みいただいた皆様との公平性、バランスを一応なりとも確保するためです。ということはつまり近々-2月上中旬にも-電子書籍ダウンロード販売を開始する計画です。

よろしくお願い申し上げます。

平成30年睦月小春日

船橋海神

私信 或る狐の話

id:kikumonagonさん、ちょっとだけ訳してみましょうか。

此の辺りには狐と申す物多く住みける処なり。折節此の花園に狐一つ侍りしが、姫君を見奉り、あな美しの御姿や、せめて時々もかゝる御有様を、他所ながらにても見奉らばやと思ひて、木陰に立ち隠れて、心落ち着かず思ひ奉りけるこそ浅ましけれ。姫君帰らせ給ひぬれば、狐もかくてあるべき事ならずと思ひて、我が塚へぞ帰りける。

この辺りは、狐と申すものが多く住むところです。折しも、この花園にひとりの狐がいました。姫君の姿が狐の目に映り、「ああ美しいお姿、せめて時々はこのようなお姿を遠巻きにでもお見かけしたい」と思って、木陰に立ち隠れ、心が落ち着かずに思いを寄せている様子は、驚きあきれてしまうほど。姫君がお帰りになると、狐も、もう自分も帰るべきときだと思って、自分の(ねぐらのある)丘に帰っていました。

*

受験用忠実訳は、東進さんのこちらを。

センター試験2019|解答速報2019|予備校の東進

さすがに、敬語や補助動詞、助動詞に丁寧に気を配って、受験用に非の打ち所のないように訳せています。しかし、というところで、季雲納言さんの先般の記事に、非常に僕自身、通うところがあったんですね。で、この記事を書こうと思った。

*

この段落のポイントは「浅まし」の解釈です。浅ましは、受験古語として見ると、(程度が極端に振れていて)「驚きあきれる」さま、という意味です。現代語の「意地汚い」ではありません。これは、とりわけ文系受験生にとっては常識ですね。季雲納言さんなら、ましてなおさら、というところだと思います。

ただし、それだけでは訳せません。そこは、東進の訳は僕は冷たく感じる。どれくらい驚きあきれるかというと、好きな人(一目惚れした相手)が帰ると、「かくてあるべき事ならず」これ、難しいですね(訳者としては、わくわくします)。べき、というのは外からやってくる行動規範です。だれかを好きになると、その人がこうだから、(自分も)こう、と思いますね。この部分は、そのことをわかるように、わからないように書いてあります。

*

どうしてそこまでわかる、いえるかというと、言葉遣い、およびその背景にある、狐と姫君に寄せる書き手の視点が優しいからです。

続けましょう。

*

この狐、つくづくと座禅して身の有様を観ずるに、我、前の世如何なる罪の報いにて、かゝる獣と生れけん、美しき人を見染め奉りて、及ばぬ戀路に身をやつし、徒らに消え失せなんこそ怨めしけれと打ち案じ、さめざめと打ち泣きて伏し思ひける程に、よき男に化けて此の姫君に逢ひ奉らばやと思ひけるが、又打ち返し思ふ様、我、男と成りて姫君に逢ひ奉らば、必ず姫が一生無駄に成り給ひぬべし、父母の御欺きと云ひ世に類なき御有様なるを、徒らに為し奉らんこと御痛はしく、とやかくやと思ひ乱れて、明し暮しけるほどに、餌食をも服せねば、身も疲れてぞ臥し暮しける。もしや見奉ると、かの花園によろぼひ出づれば人に見られ、或は礫を負ひ、或は神頭(鏃の一つ)を射掛けられ、いとゞ心を焦しけるこそ哀れなれ。

この狐は、つくづくと座禅を組んで我が身の有様を振り返ります。「私は、前世のどような悪事の報いでこんな獣に生まれたのか。美しい人間のお方を好きになって、届かない恋路に身をやつし、無為に消え失せてしまう(のだろう、もしそうだ)としたら、遣る瀬ない、残念だ、口惜しい」と、突っ伏して強く泣いていました。そうしていると、「人間の男に化身して姫様にお目にかかりたい」という考えが浮かび(顔を上げ)ましたが、(また)突っ伏して「いえ、私が人間の男に化身して姫様にお目にかかったら、きっと姫様の生涯を無為にしてしまう。ご両親のお嘆きはもちろん、あれほどの、この世にまたとないお美しさを、無為に終わらせてしまう。これはつらい。いや、それだけではない、ほかにも…」と気持ちを乱して日々を過ごしているうちに、餌もとらないので、体調を崩して寝て暮らしていました。あるいは姫様のお姿をお見かけできるのではと例の花園に弱々しい足取りで出ていくと、あるときは人間に見つかり、またあるときは石を投げつけられ、はたまた矢で狙われたりして、ますます恋心を焦がすという、実にかわいそうな有様。

*

ここで際立つのは(いきなり素/巣に戻る/帰る)、百合かどうか、狐の性別云々ではなく、だれか届かぬ人を好きになったときの、今風にいえば「リアリティ」ですね。書き手がおそらく経験したに違いない切実さが、狐と、その描写に投影されている。書き手も、片思い、高値の花に思いを寄せるつらさを知っているから、どうしても、狐にあはれの深い筆致になる。そうとしか思えない、類推、例示、視点、言葉遣い。

実際、だれかを好きになったら、そう思うだろうという、愛です。

そのことを僕は、訳してつくづくと痛み入りましたが、おそらく、季雲納言さんは、お読みになって、おわかりになったのでしょう。

*

これ、思うんですよね。僕なんて、風邪で熱を出して寝込んでも、今生の悪事を思い出して指折り数えて神仏に祈るくらいだ。風邪は治るからいい。恋の病、癒えることなしと古来申し侍りき。

それから、これ「ごんぎつね」ですね。僕の大好きな。ごんも、兵十のはりきり網にいたずらを仕掛けて、兵十が病に伏せるおっかあに、うなぎを食べさせてやることができなかった。その晩に、ごんは、ねぐらに帰って、つくづくと反省するんです。転向、回向、改心します。

*

とかね、玉水、ほんとにいい話だ。好きw また明日も続きを訳します。

あのね、季雲納言さん、季雲納言さんの憤りは、間違ってないと思うよ。いわゆる世間の「百合」で括るようながさつな読みに、少なくとも僕は与しない。訳すというのは、作者が執筆する場に立ち返ることだという思いを今回、また新たにしました(いつも、どうもありがとうね)。

*

追記:僕はこれ、書き手/語り手は女性、狐は(これまでのところ)男性に読めます。

はなちゃん

おれはうすうす知っているんだぜ

はなちゃん

 

おれが留守にしている間

窓辺からひらりぴょん

キッチンやソファのあたりを偵察し

安全と

自分の王位を確かめたあと

座布団の上で昼寝をする

 

そしておれが帰宅しドアを開けると身をかわし

「シャー」

はなちゃん

このところシャーをいわなくなったね

まじまじとおれをみて

 

窓辺の特等席に

悠々ご帰還

dk4130523.hatenablog.com

くーちゃん

ねこは耳がいいと聞く

駅から自宅までの数百歩

くーちゃんがどこかでおれの足音を

聞き分けてくれたなら

その場所を知りたい

 

おれが知りたいのはたとえば

そのようなことで

次の一歩

喜びと決然が備わる

【御礼】ずったら速報 - 2019京都文フリ黄金頭さん本販売実績報告

暗躍する自称文芸評論家、船橋海神です。暗躍と翻訳は好きですが暗夜行路は好きではありません。

さて本日2019年1月20日、京都文フリにお越しになった方、おつかれさまでした。また、当ブースにお立ち寄りくださった皆様、誠にありがとうございました。以下、簡単ながら実績のご報告です。

まとめ

  • 印刷50部
  • 現地販売17部(メールでお取り置きご要望お寄せくださった1名様を含む)
  • 自称文芸評論家の布教用購入12部
  • 黄金頭さんご自身の献本用5部
  • 通販抽選お申込み12名
  • 50-(17+12+5)=16>12

となりました。よって、

事務連絡

  1. メールで通販抽選お申込みくださった方、全員当選です。別途ご連絡します。郵便代引きになる見込みです。
  2. 私から個別にid:コールを差し上げた方(A)、反対に個別にお声かけくださった方(B)につきましては、(A)の方→贈呈致します。これは、私のプロジェクトをご支援くださった御礼の一部です。そのままお待ちください。(B)の方→1.の当選者と同じ、別途ご連絡します。郵便代引きになる見込みです。

第2弾について

再販、第2弾のご希望を早くも複数の方からいただいています。実現させます。2019年4月末に競馬場で会議が行われるでしょう。平成と次の時代をつなぐ、腕の確かな書き手と同じ時代を生きられることは幸せです。

東京開催について

ただし、5月6日の文フリ東京に無理くりに合わせにいく考えはございません。黄金頭さんには、息長く、紡いでほしい。書き手には書き手固有の生態とリズムがあります。新作なし、もし5月6日に並べるにしても、薄いアンソロジーの第2弾にしようかと考えています。

第2弾の目標

100部、行きたいと思います。黄金頭さんの暮らしに寄与するという目標からすると、ほんとうは1,000部を掲げたいところですが、それはいずれ。みなさまの引き続きのご協力をお願いいたします。

お詫び

本日京都会場で、本体と付箋をセット800円でお求めになった4名の方、私のミスです。本来は、現地でセット500円でお譲りすべきでした。申し訳ありません。お手数ですが、メール、tw、IDコールなど、何らかのアラートをいただけたらと思います。300円の差額とはいえ、個別に対応させていただく考えです。付箋のおまけをお送りするなど…。万が一、ご寄付くださる場合には、その旨おっしゃってくださると幸いです。

うれしかったこと

この企画を詰めに、阪神競馬場でお会いした前後から、これは偶然かもしれませんが、黄金頭さんの調子、バイオリズムが生きる方向に少し向かったように感じられました。書き手は、書いたものが求められ、喜ばれ、金銭的対価が伴うのが一番の幸せです。金銭的な部分と事務手続きは、僭越ながらこもちししゃもさんと僕で、これからもある程度がんばるつもりです。みなさま引き続き、師匠のこと、どうぞよろしくお願い申し上げます。

*

平成30年睦月吉日

船橋海神

※現在、帰り新幹線、新横浜の手前です。船橋帰着後に少々の手直しをする可能性があります。抽選結果は確定です。

プロ野球選手 二つ名 補遺

anond.hatelabo.jp

id:TM2501さんが(口をあんぐり開けて)喜んでくださった気配がするので、古めかしいほう、マイナーな方面の、少し補遺をしておきます。並び順は思い出すままです。また、「二つ名」「格好いい」とは必ずしもいえないものも含まれます。不名誉やネタもあります。ブコメでの既出は極力外したつもり、だが…好きなのは入れてる…

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明日京都入りなので、今日のところはこれくらいで。

見るのではなく、聞く、読む、想像するスポーツだったとか、運動記者のレベルとか、いろいろいいたいことはあります。が、まあ、いろんな社会的文化的背景などもあり、この手の形容は60年代70年代に原型が出尽くした観はあります。

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ひとつだけ、せっかくなのでお読みいただければ。西本聖を描いた海老沢泰久の「嫌われた男」。私はこれ、「嫌われた男」は最高に渋い二つ名だと思います。

ヴェテラン (文春文庫)

ヴェテラン (文春文庫)

 

本書所収です。