いやあ無駄に本を読んでいてよかった。すばらしい。この id:garadanikki さんの記事は、むやみに感銘を受けました。
漱石の里子に出されて云々のごたごたは、のちの作品に間違いなく影響を及ぼしています。この、錦華と精華のころの漱石ってとても重要とつねづね思ってきたんだけど、個人史をきちんと実地でトレースした研究は少ないはず。
だいたい漱石の研究って盛り上がるのは二松学舎か予備門予科あたりからです。とっつきやすいしね。
でも、それ以前に養子養父として縁をもってしまった、この塩原昌之助というのが問題のある人物で(具体的にはめんどくさいので略)、若い時分の漱石を長いこと悩まします。有名どころで「道草」への影響は明らか。俺の見立てでは「こころ」とか他の作品にも、ちょいちょい、ああ例の叔父さんだなあみたいな恰好で顔を出している印象。
「坊ちゃん」で青白い顔をした兄貴と以来絶縁になるとか。「こころ」でKと先生をなきものにするとか。
漱石はここ150年のインテリの中で一番に「こじらせて」ます。超絶に頭いいから個人史と日本の近代の問題を同時に抱えて関数で解こうとした。いまのはてぶにもけっこういるけど(俺もそのひとりか。あっはっは)、それを昇華してあれだけの卓越した日本語で後世に残る作品世界を作り出せたメンヘラは漱石しかいない。
錦華と精華に何か残っていないかな。手稿はないだろうけど関係資料が。とかね。この辺でやめとく。
閑話休題。id:garadanikkiさんの筆致を、もし漱石が読んだら喜ぶ。そう確信したのであります。天文所、大勝軒、とひ家…。ぜひ機会があれば、俺を呼ぶべきだ(笑)。
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すばらしいものを読ませていただいた、お礼を兼ねて、以下。
錦糸町の山田家。宮部みゆき「返事はいらない」に登場するお店のモデルがここ。もうむやみやたらとおいしくて、近代的なビルに変わってしまったけれど、風情を残しています。
永井荷風のひいき、浅草「アリゾナキッチン」。
池波の好きだったといわれる築地「かつ平」。
小津安二郎、山口瞳が足しげく通ったといわれる「はち巻岡田」。
神田/本郷の近江屋洋菓子店。
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いちばんのお勧めは、甲乙つけがたい、山田屋さんと、近江屋さんです。
里見の作品を語るお姿から、なんとなく、ぶらり旅のお供、足休めに、お勧めしてみたくなりました。
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あのー、1つだけお尋ねしてみたい。「うで卵」「縁談窶」とか、一般に、話通じないんじゃないですか。俺は「里見が好きです」なんて自己紹介をして通じたためしがありません。いや、里見はほんとにうまいんだって。志賀直哉なんて話にならないくらい、うまい。と、俺は思う。
安吾ー! 買います。
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くどいようですけど、id:garadanikki さんの一連の記事、すばらしいです。眼福眼福。で、この記事のタイトルに戻って、もし上の中で未探訪のお店があれば、ぜひ足をお運びになり、感想をお聞かせください。