ノーアウト1塁2塁の光芒(海老沢泰久さんの命日に寄せて)

1950年にうまれた海老沢泰久が10代のおわりに上京したときの心象風景を、およそ10年後に振り返って次のように記している。 ぼくは茨城県の田舎で生まれ、1960年代の終りに常磐線に乗って江戸川を渡り、東京に出てきた。私立大学に合格したというだけで、そのときのぼくには何もなかった。自分の匂いのする部屋もなければ、…