おれのお袋(1949-2001)は、生涯、中村雅俊というものの存在を嫌っていた。疑義を投げかけ、公言して憚るところがなかった。
「あの人が俳優として存在している意味が私にはわからない」
いや、おれは好きだ。ゆうひが丘の総理大臣も、後付けで、まあ見たよ。そんなにわるい俳優じゃない。
しかし、何かその、作為めいたものなんだろうね。「総理大臣」としても「桑田のコピー」としても。ぎこちなさが、力が、入っている。
おれは第2世代としてそこを「おいしい」と思うタイプなんだけれど。
お袋は、広岡達朗とか、新庄剛志とか、そういうのが好きだった。息子として、よくわからんのだけど、その毛並み、天真爛漫に、本物の筋が通っているかどうか。それをいったら、中村雅俊は、香川照之よりも先のある種の筋金だとおれは思うのだが。
まあ、どっちつかずというのはあるのかもしれない。ふと、そんなことを思った。