illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

今からでは間に合わないTOEIC対策(今回は読解のさわりと心構えのみ)

17の春に大学に合格して、経堂のアパートが決まって、学生課の紹介で教壇に立つようになってから、かれこれ通算で25年近く、サラリーマンの傍ら(よって途中で切れたことはありましたが)英語や国語の授業を行ってきた計算になります。

中1補習から東大受験、院試、社会人の昇進昇格試験、小論文、TOEIC、帰国子女入試、請われるまでに何でもやってきました。現役の(副業)産業翻訳者でもあります。

現時点の力が、本日、受講生の陰で受けたTOEIC模擬試験で975点です。平日日中の本業では、外資の管理職として、日々、世界各国あての、1日平均40通の英語の(それなりに濃厚な)メールを書いています。

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これから紹介するのは、普段、生徒さんにお話しし、それなり以上の効果を出してきたメソッドです。私の流儀からして、ハウツーものをここに書くのにはためらいがあるのですが、親愛なるネットのお知り合いの方々がTOEICでお困りとおっしゃるのを目にしました。そんなわけで、今日は特別に。

ただ、題名にあるように「今からでは間に合わない」です。1年後、3年後、あるいは私のように25年後を目指していただけたらと思います。

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基本は、選択肢即決

TOEICの出題は、すべて見た(聞いた)瞬間に、答えが出ます。日本のセンター試験や私大二次試験とは、そこが大きな違いです。TOEICでは、日本のセンター試験や私大二次試験にあるような「5肢を2肢に絞り(ここまでは瞬時)、2肢を吟味し消去法に頼る」ような非生産的な小手先は、まずないと思ってください。頼(りたくな)るとしたら、実力不足です。500点、600点レベルの方にしばしば見られる錯誤、方法論上の袋小路です。

時間不足も、原理的には、これでなくなります。見た(聞いた)瞬間に「これだ」と選んだ結果が、実力値です。したがって、一瞬以上に時間をかけてしまった問題は、たとえ自己採点で正解でも、点数半減としてください。

見た(聞いた)瞬間に選ぶことを続ければ、時間はお釣りがきます。TOEICという試験の性格からしても、ビジネス現場での即答を志向しますので、このことは必然です。

例題

出展: https://www.ets.org/s/toeic/pdf/toeic-listening-reading-sample-test-updated.pdf

Q149-151の一式3問だけ、解いてみましょう。

On Monday, Salinas Products, a large food distributor based in Mexico City, announced its plans to acquire the Pablo’s restaurant chain. Pablo Benavidez, the chain’s owner, had been considering holding an auction for ownership of the chain. He ultimately made the decision to sell to Salinas without seeking other offers. According to inside sources, Salinas has agreed to keep the restaurant’s name as part of the deal. Mr. Benavidez started the business 40 years ago right after finishing school. He opened a small food stand in his hometown of Cancún. Following that, he opened restaurants in Puerto Vallarta and Veracruz, and there are now over 50 Pablo’s restaurants nationwide.

腹式呼吸で、できるだけご自身で美しいと思える発音で、英語の語順のまま理解するように努めながら、音読してください。それで、ははーんと、頭に入ったなら、問題を解いてください。このくらいの英文がすらすらと読めないで、「まず出題文から」「選択肢から」「なんとか式」に頼りたくなるとしたら、そこがすでに間違いです。

大した内容ではありません。これは成功者バイアスではなく、これくらいの英文が「大した内容ではない」と「素で」「対策なしで」読めることが、TOEICの求める水準です。ただそれだけのことです。

今回は特別ですので、(速度重視で)訳します。固有名は調べません。また、(過度の)忠実訳も心がけません。

月曜日、メキシコシティに本社を置く食品流通大手のSalinas Productsが、レストランチェーンのPablo’sを買収する計画を発表した。Pablo’sのオーナー、Pablo Benavidez氏は、チェーンの所有権を競売にかけることをこれまで検討してきたが、最終的には、他の買収提案を求めるまでもなく、今回の買収先を選んだ格好だ。Salinasの内情に詳しい情報筋によると、同社は買収条件の一環としてレストラン名を残すことに合意したとのこと。

そのBenavidez氏は40年前、学校卒業直後にレストラン事業を立ち上げた。出身地のCancúnで小さな出店(でみせ)から始まった事業は、Puerto VallartaやVeracruzでもレストランを開くようになり、現在は国内に50店舗以上を構える。

一読して、(出題画像を見れば一目瞭然ですが)日経MJによくあるような、小さな囲みの業界通信記事です。

続いて選択問題です。

149. What is suggested about Mr. Benavidez?
(A) He has hired Salinas Products to distribute his products.
(B) He has agreed to sell his business to Salinas Products.
(C) He has recently been hired as an employee of a school.
(D) He has been chosen to be the new president of Salinas Products.

 間違いようがないですね。(B)。(A)(C)(D)は、そんなことどこにも書いていない。

150. According to the article, where is Mr. Benavidez from?
(A) Cancún
(B) Veracruz
(C) Mexico City
(D) Puerto Vallarta

ね、間違いようがないでしょう? (A)

151. What is indicated about the Pablo’s restaurant chain?
(A) It was recently sold in an auction.
(B) It will soon change its name.
(C) It was founded 40 years ago.
(D) It operates in several countries.

これも、間違いようがありません。(C)

このレベルの出題ですから、訳や理解も、事実が事実として取り違いのないものであれば、問題ないわけです。

繰り返しますが、私ができることを誇っているのではなく、選択肢は極めて素直で紛れがない、ということです。よって、これも繰り返しですが、この内容を瞬時に選べないとしたら、TOEIC以前の何かが受験生に欠落しているということになります。厳しくも何でもないです。むしろ、TOEICの良心、親切さを、私はお伝えしたいと思って書いています。科挙だと、こうはいかない。

どうすればいいか

英単語そのものは、せいぜい中3から高1レベルです。加えて、distributorやacquire、あるいは記事の内容など、まずは日本語で、ビジネス文脈慣れしているかが問われます。したがって対策は次のようになるはずです。

単語を補ってください。4,000語レベルでまずはOK

単語集は何でもいいです。アフィリエイトは私の趣味ではないので貼りません。その、4,000語レベルもおろそかな受講生、受験生があまりに多い。中学卒業時点で、文部科学省というところが推奨しているのが2,500語レベルだそうです。進学校の高校1-2年で4,000語が推奨されます(これは大学受験界隈の常識でしょう)。みなさんはそれをやり直せばいい。より突っ込んだ内容は以前に記しました。

TOEICで点がとれないとかいうのは毎日英語に触れないやつの戯言にすぎない - illegal function call in 1980s

そもそも、ビジネス英語は文芸ではない。標準化、水平化(誰にでも通じること)を指向するものです。せいぜい、動詞でagree, announce, base, consider, hold, seek, 名詞でauction, deal, business, restaurantくらいでしょう。副詞が若干むずかしいとはいえ、ultimately, nationwide, それからまあ、inside sourcesくらいのものです。みなさん日々、もっとややこしいジェンダーの話とか政治の話とか(目に)してるじゃないですか。

ここで述べられているのは、企業の買収と、レストランチェーンのオーナーの出身と立志伝のほんのさわりくらいのものです。私立中学の、中3の英語の副読本に掲載される内容に、少しの大人の味付けがされた程度のものでしょう。

音読してください

みなさん、ここまで読んで、解いても、やっぱり他人任せなんですね(講義の口調)。私が音読する、みなさんは聞く。受け身でおしまい。だからいつまでもできないんです。音読、必ずしてください。私、毎朝毎晩の通勤時、iPodBBCのWorld Newsを聞きながら、たまに、シャドウイングをしたり、別の英文記事を音読したりしながら歩いています。自宅から船橋駅、会社最寄り駅から会社までの、トータル15分にも満たない道のりです。しかし、それを年間240日、往復で続けたら、年間120時間の学習になります。

もっといえば、家にいるとき、かけ流すTVは、基本的にBBCのみです。ひょっとして、聞くことはリスニング対策と思っていませんか。そんなわけないでしょう。みなさん、赤ちゃんのときに、お母さんの話すことばを、「これは日本語のリスニング対策」と思って聞いていましたか(ここでたいてい、筋のいい生徒さんは頷いて笑ってくれます)。

聞いて、口真似をする。これは、聞くことにも、話すことにも、読むことにも通じる道です。

で、ここまで口を酸っぱくしても、みなさんはやらない。私は毎週の講義の準備と本番と復習で、都合3回以上は、音読をする。だから私は今日でみなさんを受け持って2年弱になりますが、いつの間にか975点になったし、みなさんはいつまでたっても600点のままなんです。

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(一礼して、教壇を去る。拍手がもらえるときと、そうでないときがあって、つらい…)

また、そのうち続きを書きます。