はなちゃんの少し前の写真を見ていた。
はなちゃんには、相変わらず触れることができない。
相変わらずと書いたけれど、これはいつか触れることのできる日を前提にする意識の働きだ。そういうのにはわれながら嫌気がさす。
本来、猫に触ることは許されないのではないか。
もふもふだとか吸うだとか、何かしら私たちは猫ちゃんのお世話をすることに飼いならされていて、本来のもっと粛然とした関係性をねじり伏せてしまっているのではないか。
当たり前のことだが、猫は人より偉い。その上で、触れさせてくれる猫(くーちゃん)と、そうでない猫(はなちゃん)がいる。どちらかというと、勝手にお世話係に名乗りをあげて、至らない中で誠心誠意、尽くす。それは人間様の勝手な都合である。
おれがはなちゃんに触れることはおそらく一生あるまい。はなちゃんはおれが忘れていた何かを思い出させ、適切に躾けてくれる。何かの認識違いに陥る弊からおれを守ってくれる。はなちゃんは厳かだ。そしてかわいい。女と暮らすことと似ている。