illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

ごつごつしたまま書く

今週のお題「私がブログを書きたくなるとき」

「ごつごつしたまま書く」これが、私にはなかなかできません。いや、十分に、ここ(はてなブログ)で書くものはごつごつしているし、投げやりですけれど(必ずしも投げやりではないのですが)、そういう意味ではなくて。

ごつごつしていない例

これです。

http://kumabooks.com/Second-Opinion-Sample.pdf

これは、ごつごつしていないんだ。この、第1章部分は(そりゃ、ごつごつしているけれど、それも執筆意図の1つで、90年代末はこういう空気があったはずなんだ)、これは俺の代表作だ。だって、俺はそう思ったんだもん(ぶんむくれる)。しょうがないじゃねえか。全体の構想を練って、どこに落ち着くかわからない、でも、よよん君に届けなくちゃ仕方ない、だったらできるだけのきれいな言葉で書こう、噛み溜まりのないように(これは丸谷才一海老沢泰久の美徳を端的に表したことばだ)、this is 俺。うるせえ馬鹿野郎w

ごつごつしている例…の前フリ

諦めた。俺は短篇も、中編も、ノンフィクションも書けない。向いていない。15年、我慢しちゃうんだ。id:wattoさんが型と情動の話をしているよね?

www.watto.nagoya

ひっじょーうに触発されて。あ、wattoさんのこの記事はごつごつしていないと思う。いつもながらの親切な饒舌体。そいで、型という言葉は使っていないんだけれども、敬意あるパクリというのは思うに型を模倣することであって。三島が目指したのは型だよね。6世紀7世紀以来の日本の文化意志の型を継いだんだ。で、(で、っていう)ひっじょーうに慧眼だと思ったのは(あえて変なふうに引用する)、

相手が斬ろうと思う部分を斬らせるのではなく、自分がここなら斬られていい、と思った部分を斬らせることだ。たとえば左腕である。左腕を切断されても即死はしない。だが何人もわざと腕一本斬らせはしまい。だからこそ故意に左腕を切断させることは相手の意表をつくことになる。その一瞬の隙をついて逃げろ(隆慶一郎「影武者家康」)

www.watto.nagoya

お、おう。だめな自分を、自分の最もだめな部分をさらけ出す、そのことによって、忍びなら忍びの大義のために、たとえ我が身は不具となりとても、生きるんです。エドマンド・バークのいう保守の精神に通じる何かかも知れない。

翻ってごつごつしている何かの胸に迫る例

我慢しないで書く、のがいいんだろうな。我慢はする。しかし、我慢しすぎるのはよくないんだ(きっと)。

tanpopotanpopo.hatenablog.com

たんぽぽさんの、この一連の話、筆致、タメ、ためらい、ごつごつしたまま絞り出す呼吸、なんというか、ひっじょーうに心動かされて。俺も介護や見取りは相応に通過したわけよ。けれどね、俺には、その瞬間、並行した世界の息遣いを、書くことに抵抗がある。5年10年15年我慢して、相応十分な咀嚼をしてだな(できっこないんだけれども)、寓話化して、こう、場に、月45PVくらいしかない読者のみなさんに、差し出したいと、思うわけなんだ。型に、事象を温めて、型も、中身のどろっとした鉄もそうだけれども、冷え固まるには時間がかかるだろう? ある程度、かっちりした、ゆるぎないものを、打ち立てていきたいわけよ。

反省したね。たんぽぽさんのこのシリーズを読んで。嘘じゃねえ。俺のコメントを見てくれりゃ分かる。

韻文てのは、刀の一閃が勝負だ。藤沢周平/池波正太郎めかしていえば「キラッ」「鋭ッ」でお終いにする、そのコンマ数秒のために、侍は我慢するんだ。

その、韻文(57577)をおやりになる、たんぽぽさんのタメと、いまこの瞬間に五臓六腑をのぼっていくため息が、こう、呼吸器を、食道をのぼっていくときの、内襞がなぞられ、削られていくときの感じが、ある。

またタクシーに乗り帰宅して、友人との約束の時間まで実家の掃除をした。

冷蔵庫は、いつの何か解らないもので溢れている。捨てれば揉めるのは解っていた。小皿に謎の残り物があって、さすがにこれは捨ててしまおうと提案すると

「それは、明日カラスさけっから取っといて」と言う。

「カラス!」私が驚いていると

「おれが外さ出はっとエサもらうべとカラスが飛んで来んが」と、楽しそうに言った。

カラスが来るのも嬉しいなんて、どんなに寂しい日々なのだろう。

私は皿を元の所に置いた。

そして洗濯物を取りに2階へ行き、ベランダの窓から外を見た。すると、近くの電線にとまった1羽のカラスがこちらの方を見ていた。

tanpopotanpopo.hatenablog.com

これ、芥川賞候補だろう? 違うのかw

ここを切り取る俺もすごいが、「カラス」「おれ」で一閃を食らわす技の冴えといったらない。上述したような理由で俺は私小説が大嫌いなんだけれども、間違っていた。