大野晋他「岩波古語辞典補訂版」(手元のものは1990年2月8日発行と2016年1月12日発行。ここでは後者)に拠って書きます。
- 飯は昼に食うものである。
「お朝にしましょう」「お昼にしましょう」「お夕にしましょう」「お晩にしましょう」「お夜にしましょう」
この中で意味が通るのはお昼だけです。実際、「岩波古語辞典」他、いくつかの古語辞典を当たりましたが、単独で名詞として食事の意味をもつのは昼だけです。
- 古くからの日本人および日本語の時間軸には2系統ある。P.1143, P.17
昼系統(朝-昼-晩)と、夜系統です。後に飯がひっついて「朝飯」「昼飯」「晩飯」と派生した。飯に敬語(いまは美化語というのかな)の「御」がついて「朝ごはん」「昼ごはん」「晩ごはん」となった。夜のほうは、まだ「夜飯」(よめし)が、他ほど市民権を得ていないと思う。上代の感覚でいえば、夜ごはんは、その先でしょう。
- 夜(よ/よる)は副詞であった。P.1397, P.17
副詞ですから飯のような名詞の上に乗って複合語を成すことは例外的でした。
- 夕(ゆふ/ゆふべ)は比較的、複合語を成しやすい。P.1371-
例えば、夕焼け。夕餉なんてのもあります。朝餉もあります。夜餉は、それらに比べて、あんまり(か、ほとんど)ない。
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ということで、夕飯/夕ご飯が、夜ごはんよりも優勢に感覚的に感じられるのには、古語の立場からはそれなりの理由があります。コトバンクと現代人の論理と感性では、わかりにくいことです。