マーク・レイのことは日本ではどうやらあまり/ほとんど知られていないらしい。試しに検索すると次の記事が引っ掛かった。
なんというか、安っぽいまとめ記事で、彼の危険で美しいライフスタイルがまるで伝わってこない。だから、文体は大切なのである。何でもかんでも、まとめ口調、教えてあげましょう口調では、肝心のことが伝わってこない。そして、思考や感性は文体からの規定も受ける。
人としての人生とは何かを考えさせられる
常にチャレンジをする人生を選んでしまったことでホームレスになってしまったレイさん。レイさんの6年間のホームレス生活は、きっとレイさんにしかわからない充実した人生だったのでしょう。
どこにいても、何をしても、一度きりの人生あなたがどう充実させるかということが結局一番大切なのかも知れませんね。
(ほんとか? 大丈夫か? ほんとに見て考えてこれなのか?)
憤りを鎮めつつ、閑話休題。入口としては、次の動画がお勧めである。
Meet homeless model-turned-photographer Mark Reay
Meet Mark Reay - Homme Less Trailer HD
英語が不得手な方は字幕を有効にすれば大丈夫。また、ほかにもいくつかYouTubeに上がっている。
なんというか、音楽、映像、スタイル、すべてが格好いいのである。人としての人生とは何かを考える隙など、微塵も与えてくれない。
映画にもなっている。というか、レイが業界仲間のWirthenshonに「実は俺、モデルとしてもファッションカメラマンとしてもそこそこ成功したけどなんかいやになっちゃって、2008年夏から友人のビルの屋上を根城にしてるんだ」と打ち明けたことがきっかけで、ドキュメンタリーの撮影が始まった。
Mark Reay - Wikipedia, the free encyclopedia
この、長編版を、先日たずねた小豆島の旅館のテレビでみた。普段はテレビをほとんどまったく見ない(テレビの日本語が耳に入るとアレルギーを起こす体質)のだが、せめて旅に出たときくらいはと、ゆるい日常に身をゆだねることにしている。ひとめ見た瞬間、Jazzyな音楽と、映像と、マークの長身が目を捉えて離れることが出来なかった。
上の動画ではカットされているが、確か、
- 月の必要経費は1,200~1,500ドル
- たまに、母親の暮らす実家に車で帰る。帰るときにはスーパーで食材を買い込んでいく。
- 撮影の仕事の合間にやるせなくなって涙がこぼれてくることもある
といった、とてもリアルな中年の孤独が映し出されており、「どうして日本ではこれができないのかな」とお嬢にぼやいてしまった次第。(ヒント:冒頭のまとめ記事)
(この動画が、孤独な肖像をいちばんよく映し出しているかな)
さて、そのマーク、ドキュメンタリー映画が評判になって、住まいを知られてしまったことで別の場所に移らざるを得なくなり、現在は別の場所で隠れて暮らしているという。
ドキュメンタリー第2弾に向けた仕掛けを思わせるようでもあり、本当にどこか人としての何かが欠損してしまったようでもあり(ほめている)、マークような危険な男を闇に乗じて抱擁するNYという都市は、実に魅力的といわざるを得ない。