illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

那須日光宇都宮餃子に飽きた俺たちのために/「記憶に残る風景」 #地元発見伝

「記憶に残る風景」 #地元発見伝
https://www.google.com/maps/preview?q=36.738112%2C140.170344
那珂川町, 栃木県県道52号線

地元の魅力を発見しよう!特別企画「地元発見伝
http://partner.hatena.ne.jp/jimoto/

前段

那須日光には飽きた。餃子も食いたくない。しもつかれは無理。

馬頭という土地柄

栃木県の日光の反対側、八溝山地のほうに馬頭町というところがある。行政的には那珂川町で馬頭は旧名なのだけれど、この地はかつて那珂川連邦共和国を名乗るなど、町村合併と土地のアイデンティティは違うという誇り高い文化が息づいている土地柄だ。馬頭は馬頭、烏山は烏山。潔い。政党「俺」の人はそこら辺の心意気をよくわきまえるように。

馬頭はかつて武茂(むも)氏という宇都宮氏に端を発する一族の領地であったらしい。本陣を武茂城といって、写真右手奥、遠くに小さく鳥居が見えるその先が遺構である。いまは静神社が鎮座している。

広重美術館へ

仕出しの東陽館さんやアビイ・ロードのおじいさんのステマではない。Googleカーがここまでしか入らなかっただけである。鳥居まで写真では遠くにみえるが600mほどであろうか。車できたら隣の広重美術館に立ち寄ってそれから神社のほうに足を向けるのがいいだろう。広重美術館は馬頭町出身の青木藤作という実業家が歌川広重の作品を地元に寄贈したことがきっかけで15年ほど前に建てられた。いつ来ても広重作品が飾られている居心地のいい美術館であるから、とりわけ往年の永谷園ファンにはたまらないことと思う。

個人的に馬頭で立ち寄りたいスポットは3つ4つ。例祭がなくても、いつ足を運んでも静神社は旅人を癒してくれる。千年屋さんのロールケーキもまた絶品である。


平成25年 栃木県那珂川町馬頭 静神社祭礼の屋台 - YouTube

ほかに何があるかといわれると困る。馬頭には西日が差すころに戻ってくるのでここは先を急ぎたい。旅の終わりに静神社に再び立ち寄る予定だ。

烏山へ

隣町の烏山には蛭子さんと太川陽介とバスで行くのがお勧めだが素人には難しい。蛭子さんと太川陽介なしでバスで行きたい。烏山線は烏山でおしまいなので馬頭からは町営バスで行く。1時間に1本もないがそこはうまくやってほしい。所要時間は約40分。

https://www.google.com/maps/preview?q=36.655654%2C140.153816
那須烏山市, 栃木県国道294号線

やってきたのは島崎酒造東力士さんである。JR烏山駅からは歩いてい15分ほどの距離にある。先ほど千年屋さんでロールケーキを堪能したことと思う。しかし甘いものと酒は別腹のはずだ。いけるだけいってほしい。東力士。旨口というが甘口である。甘い。そしてうまい。むかし那珂川の水運で働いていた男たちが肉体労働の疲労補給に甘いものを欲したのが発祥といわれる。

島崎酒造さんの洞窟探検がまた涼しくて楽しい。洞窟ファンにもお勧めできる。東力士にもいろいろな種類がある。ゼリーもワインもある。並びのすぐ手前にあるパティスリー・イナガワさんの日本酒ゼリーもぜひお土産に買い求めいただきたい味わいである。俺の分をとっておいてほしい。

山あげ祭

そして烏山といえば山あげ祭である。7月第4週に烏山は異様な熱気に包まれる。これを味わうために俺は地元にいたときカブにテントを積んで前日から有給をとって乗り込んでいた。


烏山山あげ祭2014日野町 - YouTube

八雲神社の例祭に当番町の若衆が神輿をあげ、街中で屋外歌舞伎を繰り広げる。その昔には那珂川水系の下流から、あるいは那珂茨城の海から、水運によって京の都の文化が運ばれてきたといわれる。それが烏山の遊郭、山あげ、酒の文化に息づいているのかもしれないと、島崎酒造のおかみさんがかつてうれしそうに話してくれたのを覚えている。

山あげの当日には島崎酒造さんがふだんは酒作りに使う水を「ふるまい水」として出してくれる。涼を楽しむのにこれ以上の演出はないだろう。つい調子にのって店内で東力士のきき酒をしてしまうこと請け合いである。だからバスで/テント持参1泊の覚悟で来いと俺は先にいったはずだ。

ところでここ烏山は池田聡の出身地でもある。烏山1千年の叡智が「モノクローム・ヴィーナス」に結実したということになろうか。なんかいやだ。


池田聡 月の舟 - YouTube

大金宝積寺

祭りと東力士とゼリーと街並みを堪能したら験担ぎにいこう。烏山線には「大金」駅と「宝積寺」駅がある。おおがね/ほうしゃくじ。長閑ないいところではあるが、縁起のいい字面が駅名に並んでいるだけで、何もないので降りる必要はなく、烏山駅で記念きっぷを買う。そして2時間に1本しかないバスで馬頭に戻る。

再び静神社へ

静神社に登ろう。これまでの約半日の探訪によって那須日光宇都宮とは違った文化が那珂川水系に息づいていることを肌で感じていただけたことと思う。馬頭烏山は茨城大子町の八溝文化圏との関係が深く、それはあたかも県南の足利が宇都宮よりも群馬桐生文化圏と親和するのに似ている。

静神社に上ったら1つだけ試してほしいことがある。

石段の上、本殿から来た道を振り返る。日が西に傾こうとする時間帯に、逆光の緑の境内から、那珂川に並行して南に伸び、開けていく馬頭の街並みを一望するとき、かつての武茂氏の栄華の幻が眼前に広がっているはずだ。静神社、栃木県内では鹿沼古峯神社と並び最高の格式をいまなお誇る神聖な場所である。まずい餃子をしたり顔で食っている場合ではない。