小説家になりたい増田のために、ここはひとつ、いち老害として積極果敢、勇猛の精神を以てアドバイス罪に問われに参りました。
簡単な方法
自称することです。小説家は国家資格ではありません。罪にも問われません。所轄官庁への届け出不要。「ぼくはわたしは小説家だ」と名乗ればいい。例えば、はあちゅう。伏せ字には致しません。彼女は、小説家を自称しています。大変結構なことです。また例えば、乙武。彼も、小説家を自称しています。大変結構なことです。
正攻法
基本的には次の3つのステップを経ればいいでしょう。
- 小説を書く
- 応募/受賞か何かをする
- 世間から小説家と認められる
順に解説します。
小説を書く
- べらぼうな数の本を読む
- 私淑/接続する作家を決めて模倣する
- あるいはジャンルを決める
- 小説を書きたいテーマに出会うのを待つ
- 文体を練り上げる
- まず1作を書き上げてみる
それぞれ10年くらいかかると見ればよろしいでしょう。間に合いません。間に合わない中で、勝負をする他にありません。
例えば、自分は太宰の後継を狙うと腹をくくったのなら、太宰、芥川、川端、三島、井伏、丸谷くらいは全作読破することが最低要件でしょう。そして代表作のいくつかを暗唱しましょう。メロスがいつだって貴方の頭の中で激怒するようになれば、まあ、入門の身支度は出来たといえるでしょうか。
ジャンルは、私小説でも、民俗学的意匠でも、歌物語でも、ガルシア・マルケスばりの奇譚でも、安部公房でも、松本清張でも、自分がバールのようなもので殴られた衝撃を感じた作品群があるはずですから、果敢にそこに切り込んでいくべきかと思います。
文体は、音読してください。自分の書いたものを街中で諳んじるのです。周りの目が気になるようではいけません。呼吸をするようにことばを紡ぎ、書いたものと読んだものと読まれたものの声が重なっていい感じのするところが、増田の地声です。カラオケと原理は同じです。テーマはそう簡単に降りてきませんから、神社にお通いになるといいでしょう。ほかに、港まで釣りに出て糸を垂れるなど。
書き始めたら、ぜひとも完結させてください。一篇書けば、自分の辿った稜線と、山の高さが見えます。それはかけがえのない財産にきっとなる。他人が何をいおうと、ぼくはわたしはこの山だというのが手応えとして両の掌に残ります。その頂から見る光景は、何ものにも代えがたい喜びです。
応募/受賞か何かをする
動機は金ではないかも知れません。私のように(【PR】えへんおほん)。しかし、それだって、賞金はわかりやすい目安/指標です。応募方法はそこらに転がっていますので、ぜひご自身で。私も累計で50万円くらいは獲ったクチです。ちなみによろしいですか諸賢、18で応募を始めて27年間で50万円強ですよ。3歳から本の沼地に嵌って4万冊を読んで家財を傾けてこのありさまです。
世間から小説家と認められる
まあ、だいたい運のよい方でも没後50年ないし200年を過ぎてからです。いいじゃないですか、中等教育を受けた日本人なら、大半は「犯人はヤス」「ごん、おまえだったのか」「メロスは激怒した」「下人の行方はだれもしらない」「その声は、わが友、李徴子ではないか」を知っています。小説家になりたいってのはそこに賭けることでござんしょう。
まず1作を書き上げてみる
1作でいいんです。たとえば、江國香織は99%の作品は読んでもあんまり残らない。けれど「デューク」だけは、あれは圧倒的に何かを残してくれる小説です。そこを狙うのはありでしょう。古くから、この界隈では「だれしも1作くらいは小説にできる物語を持っている」といいます。
私も、そこを狙ったつもりでした。
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おれの青春は終わった。よよん君、すまない。ありがとうね。
身近なところで
ここからが本題です。
これまで縷々、述べてきたことをすべて取っ払い、すっ飛ばして、わが軍には、智将黄金頭氏がいる。かれは大変な読書家であり、持って生まれ、鍛え、持続したセンスと、文体と、すぐれた作品がある。私はだれが何といおうと、黄金頭さんは近代古典的な意味で《同時代を代表する》物語作家だと確信しているし、そのことは今後、彼が売れても売れまいとも変わらない。
その彼にして、
これです。まあ、余興の記事とは思うけれども(笑)。
しかしそれだって、15年に及ぶ膨大な蓄積と、
この奇書があって、それでも、小説というのは難しいテーマであるらしい。
それでもせめて基礎トレーニングだけでもと仰せなら
前に書きました。
日本語で勝負するわけですからね。まあ、うまくいかないでしょう。増田が、ではなくおれが。脱線ついでに、ミーハーなところで、村上春樹のこれは読んでおいて損はないでしょう。
まだまだ、漱石であるとか、中上健次であるとか、話せる/話したいことはたくさんあります。まあでも、こればっかりは、「まず1作を書き上げてみる」「語り/文体の確立」これらに尽きるのではないでしょうか。もちろん、そうやすやすとできる話ではありません。だから僭称していいかといったら、そりゃ、叩かれます。その意味ではいい時代になりました。かしこ。
追伸
AKBに入り、ゴーストライターを使って「小説家に転身します」と宣言する。なかなか上手い方法です。