12月24日25日や2月14日がたれから強いられるではなく、自然に中止されんとする本邦昨今の風潮は、まことに慶びを禁じ得ないものがあります。
しかし私は貴君らに提唱したいことがある。それは7月6日、すなわち七夕の前夜にパコをなさいということです。日本人なんだらう? 鬼畜米英の懐柔策に乗らない。ならそこからもう一歩進めて、日本人の精神風土をそのもっとも奥底で規定する風物のひとつ、七夕をなぜ思い浮かべない。嘆かわしい。福田恆存の守護霊にチクるしかない。
以下は私が胸の奥底に秘めて頑なに守り通してきた夏の星2景勝である。来ないでほしい。
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出羽三山神社、羽黒山参籠所「斎館」
最強です。信仰上の理由で鳥居がくぐれない人が入ってこないのもいい(まーた、そういうことを疲れからか、不幸にも書いてしまう)。ざっくり、一泊8,600円。精進料理がコースはあるけれど、まあ、10品で3,240円。宿泊+食事12,000円/人の予算で、現地までは鶴岡まで電車、鶴岡からバス。這ってでも足を運べかし。
和室も、お庭も、道中の山道もいい。夜、寝静まった25:00ごろに(黒塗りで何ひとつ見えない)漆黒のお庭に出て寝転がり、口を開ける。おれは例年仕事さえなければペルセウスの流星群の日を狙って斎館に(不幸にも、一人で。いや、幸せこの上ない)籠り、MISIAを口ずさみながら、星々がおれの口に宿すのを楽しみにしてきた。
折口信夫か! 料理も、お風呂もいい。水が空気がきれいだからね。(ついでに潔斎だから行為は慎むのでございますのよ。)そして持参した森敦「月山」とその小島信夫渾身生涯この一篇たる解説を味わう。
至福だ。帰りたくない。下界に降りるときには疲れから黒塗りの高級車に追突しないようによく気を心を配る必要があります。
帰りに、藤沢周平記念館に立ち寄るのも乙なものでせう。
幼馴染の宮沢りえに一旦は振られて死中を潜り片足を引きずりながら家路を求める人生でありたかった(「たそがれ清兵衛」)。叶わぬ夢よのう、清兵衛―それは田中泯。
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竹富町波照間島星空観測タワー
いまひとつは、やっぱり、どうせ足を伸ばすなら、波照間でしょう。
ただ、南十字星が目当てなら、7月のいまの季節はもう、おわりです(オフコースか)。冬場がいい。南中時刻がまとめてある次のサイトが参考になります。
波照間には、かつては、石垣からRACだった。
僕も、数えるほどしか乗ったことがない。いまは、石垣から船便です。ぐおんぐおん縦に揺れて潮を浴びる。地獄の65分間。追突された黒塗りの高級車に乗っていた谷岡氏はこんな感じだったのでしょうか。そんな大げさなものでない。季節に依りてはクジラが見える。
波照間も、ニシ浜愛好者の嘆きが聞こえてくるようだが、ずいぶんと穴を掘られ、開発された(わいせつな意味ではない)。自転車を漕いでニシ浜に通じる草道の先に海の青が顔を覗かせる、あの一瞬が、僕は好きだった(オフコースか!)。昼は海の青と砂色、夜は暗闇に満天の星。いまでも嫌いだけれどもゆんたくが嫌で、だったら来るなよと。ヤシガニに趾(あしゆび)を斬られるは(その後で塩茹でにしてあおさとともに食ってやったけれども)、2003年だったかな、もうだめだしのうと思って波照間に来、その足で鳩間島に立ち寄った。そこで歌姫鳩間可奈子の存在を知り、思いとどまって、おれは、おれは…
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久方の天の川瀬に舟浮けて今夜か君が我がり来まさむ(万葉1519)(山上憶良(!))
— nekohanahime (@nekohanahime) July 1, 2018
天の川瀬に舟を浮かべて、今宵、あなた様が私のところに来てくださるのかしら。
(憶良に貧窮問答歌は似合わないだろう。)
久方は、枕。意味は「悠久」と「1年ぶり」、なのだけれど、訳さないのが上品でしょう。