illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

春はあけぼの、の春はいつか?(本文関係なし)

ま、あの、これから話すことは、別にいいんだ。どのみち通じまい。

驚いたのは、秋山虔先生が亡くなっていたこと。

秋山虔さんなんて、みなさんご存知あるまい。池田亀鑑の流れを汲む、国文学の大先生です。僕は、本郷で面識あるかな。これから話す内容にも関わるんだけど、秋山先生は清少納言のことが嫌いではないにせよ、その、彼女の、上流階級に同化せんとする浅薄さ(として秋山先生の御目には映った)が、お嫌いだった節がある。

清少納言の出身階級を忘れひたすら上流に同化しようとした浅薄な様の現れである(秋山虔)。

枕草子 - Wikipedia

ひどいよなあ(笑)。そういうこと仰ることなかれ、だぜ、いくらなんでも、と、そうだ思い出した、そんなレポートを鈴木日出男さんのところに持っていったことがある(1994)。

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そんなことは、なかろうもん。清少納言は、やっぱり、すごいよ。近年では、藤本宗利が、よくわかっていると思う(にこにこ)。

中宮定子への敬慕の念の現れである。道隆一族が衰退していく不幸の最中、崩じた定子の魂を静めるために書かれたものである。故に道隆一族衰退の様子が書かれていないのは当然である(同上)。

清少納言、藤原諾子は、なぜ「枕草子」を書いたのだと思う?

成立年代と断章中にみられる回想の時系列からいって、考証には微妙な点を多分に残す。つまりね(何がつまりだ)、あれ、あたかもいま眼前で起きていることのように彼女は記すでしょう? でも時系列で並べて眺めると、あれ? って思うことがないわけじゃない。申し訳ない、山際淳司作品なら95%以上の精度で話ができる。しかし正直、清少納言までは(大好きだけれどもだ)手が回り切らないのよ。人生には、限りがある。

しかしだね、僕は彼女の執筆意欲の柱のひとつに、中宮定子様へのお弔いがあったことは間違いないと思う。その線を捨てきれない。

ひとつだけ。

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「春はあけぼの」。春場所は曙がなぜか強い、じゃないぜ。これさ、この春は(3)あけぼの(4)、同時代の誰にも書けていないと思うよ。破調も破調。7音使うのだったら「寝なまし・ものを」とか、「夏来・にけらし」とか、次に続くんです。それが、「春は明け/ほの夏は夜/秋は夕(暮れ)/冬はつとめて/いふもさらなり」(57577)。な、はっはっは。ちゃんと(頭ん中で省略できる人にとっては)和歌になってるんだ。ちなみに当たり前だけれど、これぜんぶ清少納言のフレーズですぜ、旦那。天才でしょう?(清少納言が)。俺、わりと自分の説を信じてる(笑)。だいたい、どれもおかしいんだよ、あの四季の書き出しは。何かある。ないんだろうけどさ。俺なら、仕込むなあ。お題、か・き・つ・ば・た。「唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」とかね。

品詞分解には功罪あって、アトミックさは必要だけれど、それだけで読んでいては、伝わらない、大局を見誤ることが得てして、ある。けれどこうして四季折々を、脳内にリフレインされる、例のあれ(春はあけぼの)的な既視感で眺めていると、彼女が、いろんな罠を仕掛けていることを、ふと感じることもまた、ある。

だいたい、どんな書き手だって、書き出しには万感を込めるんだよ。

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎは少し明りて」

これさ、清少納言が都仕えを始めた、田舎から出てきた、その輝きの、導入、ライトモチーフ、中宮定子様との日々の、基調だよね。いや、笑うだろうけど、音楽服部克久NHK大河小説「清少納言」やったら、冒頭はこれになるよ。

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山際(山ぎは)と、山の端(山のは)の、違いは、さすがに、分かるじゃろ?

いや、いいんだ。俺は連日の次年度予算審議で身を潰えんとしている。際(きは)は、山それ自体じゃないほうをいう。空の側の、山に触れそうなすれすれのところ。端は、山の側の(だから、山「の」っていう)、空すれすれの部分のところ。

白くなるのは、依って来たり、山際(山ぎは)のほうに決まってるさ。そっちから日が昇ってくるんだから。それが、山の端(稜線の側)から白くなってどうする。全篇、「枕草子」は、この調子でことばが選び抜かれていると、いつも思うんだ。われわれが、わからないだけでね。

あ、それで思い出した、「ばむ」(端む)のお詫び。酔いが醒めてから、やります。誠に相申し訳ございませんでした。

ばむ

またわい好みの釣り針を…w 大野晋説「端む」「生(は)む」だったはずです。はしに、いろが、あらわれるさま。(いま物流予算審議の最中なので辞書引きは帰ったらねw) /追 訂正します。誤りがありました。

2018/02/23 16:12

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