illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

「夢十夜」小僧に物を申したき寺田寅彦とうちゃんの声(57577)

三が日くらい、べらんめえでなくて丁寧に物を語ってみてもよござんしょう。

www.watto.nagoya

これが、

kihiminhamame.hatenablog.com

こちらさんに導かれて、寄り道をして、

dk4130523.hatenablog.com

戻ってきて、漱石夢十夜」の第三夜ときて、

夏目漱石 夢十夜

*

みなさんご存じないでげしょうが(この江戸なまりは書いていて自信がないw)、私は贔屓の寺田寅彦を思わず引きたくなった。寺田寅彦はいいよー!

1896年(明治29年) - 熊本の第五高等学校に入学。英語教師夏目漱石、物理学教師田丸卓郎と出会い、両者から大きな影響を受け、科学と文学を志す。

寺田寅彦 - Wikipedia

何せ、あの「柿の種」、

柿の種 (岩波文庫)

柿の種 (岩波文庫)

 

棄てた一粒の柿の種
生えるも生えぬも
甘いも渋いも
畑の土のよしあし

これは、生半可の書き手には、出ない。この「柿の種」冒頭に寄せた断章、そしてこの、

大正十三年ごろの「無題」に、ページの空白を埋めるために自画のカットを入れたのがある。その中の数葉を選んでこの集の景物とする。これも大正のジャーナリズムの世界の片すみに起こった、ささやかな一つの現象の記録というほかには意味はない。
この書の読者への著者の願いは、なるべく心の忙(せわ)しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたいという事である。

余裕、ゆとり、ゆたかさ、ゆったりした時間(というように、y音には不思議な効果がある)、次の一節だけ是非ともお読みいただき度候。

*

大学の構内を歩いていた。
病院のほうから、子供をおぶった男が出て来た。
近づいたとき見ると、男の顔には、なんという皮膚病だか、葡萄(ぶどう)ぐらいの大きさの疣(いぼ)が一面に簇生(そうせい)していて、見るもおぞましく、身の毛がよだつようなここちがした。
背中の子供は、やっと三つか四つのかわいい女の子であったが、世にもうららかな顔をして、この恐ろしい男の背にすがっていた。
そうして、「おとうちゃん」と呼びかけては、何かしら片言で話している。
そのなつかしそうな声を聞いたときに、私は、急に何物かが胸の中で溶けて流れるような心持ちがした。

*

寺田は、果たして「夢十夜」を念頭に置いていたのかしらん。

anond.hatelabo.jp

いつもの、彼かな?

*

まあさ、化物は、いつだって我が心に住まうものよ。いつか、その心の、なつかしく溶けむことを願ひ置き、騙されたと思って、「柿の種」手にとってみて。