illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

(私信)和泉式部「とどめおきて」のこと

id:kikumonagon さんの受験勉強の気休めにと、ちょっと、訳しておきます。ざっとウェブを見た限りでは、しみいるような訳がみつからなかったので。

とどめおきて/たれをあはれとおもふらむ/子はまさるらむ/子はまさりけり

和泉式部後拾遺集、哀歌

::: 石塚修 Ishizuka Osamu ::: 筑波大学 人文社会科学研究科 文芸・言語専攻 教授

私の、高校時代の恩師です。まさか、ここで再会するとは思わなかった(笑)。石塚先生、ずっと同じことおっしゃってる。よほどこの歌がお好み。僕もだけど。

それで、歌の背景をひらたくいえば、小式部内侍が、男子を生んだ際に予後をわるくして亡くなってしまいます。享年20代半ば過ぎと伝えられる。そのときに、母の和泉式部が詠んだもの。

訳します。

子と母をこの世に残して、あの子はいったいどちらを切なく思っているかしら。子のほうよね。だってわたしがそうだから。

「らむ」は現在推量。目のとどかないところでいま起きていることを、どうかしら、と想像する。「けり」は俗に気づきの詠嘆といって、はっとする気持ちを場に嘆き放り投げる。僕の訳だと、筑波の人文社会には採点者を指名すればきっと受かる。それ以外は減点されます。

でもね、僕はこの訳だと思う。「だったのだなあ」なんて、杓子定規に訳したのでは伝わらないものも、古文解釈にはあります。