illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

There is someone watching...

映画「オーシャンズ11」で、主人公の1人テス(ジュリア・ロバーツ)が、いくつかの印象的なフレーズを言い放つ。その1つが、これ。

You of all people should know Terry, in your hotel, there's always someone watching.

http://www.imdb.com/title/tt0240772/quotes

不用意なふるまい、そして発言をした夫テリー(アンディ・ガルシア)を、テスがたしなめていうシーン。意味は「(他の人はともかく)あなたは知っているべきよ、テリー。このホテルでは、いつも誰かが見ているの」というほどのもの。

これが、もう少しあとの、前の夫ダニエル(ジョージ・クルーニー)との生き生きとしたやりとりの対照的な伏線になっているのだが、それはさておき。

オーシャンズ11 (字幕版)
 

明日と、明日に続く今日は特別な日なので、ひとつ、もったいぶっていないで、僕からエピソードを。

*

よよん君がなくなったあと、姉のさちこさんは、夜中に目を覚まして、寝室のある2階から、1階の居間に降りてくることが多くなった。だれかに、疑いもなくよよん君なのだけれど、呼ばれている気がするのである。

多くの場合、仏壇の前には、ねこの「みゃあみゃあ」が座っている。

「みゃあ」

こちらを振り向いて、鳴く。

「ようちゃん」と、姉はつぶやく。

たまに、みゃあみゃあではないこともある。見覚えのある背を丸めて、座っている人がいる。

母親だ。

じっと、遺影を見つめている。

そんなとき、さちこさんは、黙って、静かに、踵を返す。

*

「あのなあ」

「なあに、母さん」

「みゃあみゃあがな」

「うん」

「母さん、夜に目を覚まして、ようちゃんの顔を見にいくとなあ」

「いやだ母さん、そんなことしてるの」

「うん。わたし、ようちゃんのことが、かわいくてなあ」

「知ってる」

「そやろ」

「それで? 話のつづき」

「みゃあみゃあがな」

「うん」

「仏壇の前で、話してるんやで」

「ようちゃんと? まさか、そんな」

「あれは話をしてる顔やと思うのやけど、なあ」

*

(私も、知ってる)

そのことばを飲み込んで、さちこさんは、

「この母にして、あの弟ありやなあ」

そんなふうに、思い返すのだった。

*

明日の始発で、京都の猫寺(称念寺さん)に向かいます。

www.nekodera.net

9時に門が開いて、拝観の時間帯になるとほぼ同時に、僕はお墓に向かい、花を、甘いものを、よよん君が好きだったコーラを、捧げるつもりです。

どなたか、おひとりで構いません。9時を回って1分、2分したところで、京の都のほうに向かって、よよん君のことを思い出してあげていただけませんか。

残念ながら、お父様は、よよん君のあとに、病気で亡くなりました。

それでも、お母様、お兄様、お姉様、血液グループ先生、私、あと、どなたか。世界に6人もいれば、その姿を察して、ほかのだれかが「みゃあ」「にゃあ」と、静かな鳴き声を、聞かせてくれるはず。

そんなことを、思ってみます。