今週のお題「私のブログ・ネット大賞2016」
そりゃことし2016年にいちばんの熱量を感じたのはこちらの先生です。
- 圧倒的な愛情を圧倒的な文体でカミングアウトする。
- 反響を受けたら正面から渡り合う。
- 読者のさまざまな意見交換が成立している。
- 後で読んでも同じようにおもしろい。
「ぼくのかんがえるさいきょうのエッセイ」の基本条件をすべてそろえている。
4月当時、めちゃくちゃ感動した。春というのがまたよかった。危ない人が街に出てくる季節。やっぱり若くて危険な才能が芽を出してきた。逮捕すべきであろう。いま読み直しても、熱いものが胸に去来する。向井去来。衛青霍去病。
身辺雑記は、TOEICのノウハウでPVを集めるものとは違います。好きな人に、募らせた思いのたけを捧げる。好きな人は嵐かも、TOKIOかも、釣り場の平穏かも、亡くなった、いまでも大好きなおじいちゃんかもしれない。
あるいは、大切にはぐくんだキャラクターが読者からいつしか、あっというまに愛される存在になるかもしれない。
また、緊急時には、それはルサンチマンの形をとったって構わないはずだ。
俺は知らない人(かっぱでもいい。むしろ多大な関心を寄せている)の暮らしの断片をエッセイでよみたいのだ。日常のスケッチが。
バブルのころから書店店頭ではノウハウ書が文芸書を追いやる流れが形作られた。予想した通りになった。うんざりする。諦めは、押切もえが受賞したことで、ついた。
しかしはてなに来れば、まるで蝉丸「これやこの」のように行き交う人々の横顔や、後ろ姿や、消え残る影や、伴うお人形さんや、粋な小料理屋さんのシルエットをみることができる。
【百人一首講座】これやこの往くもかへるも別れては 知るも知らぬも逢坂の関─蝉丸 京都せんべい おかき専門店【長岡京小倉山荘】
(ちなみに蝉丸は猫天皇として有名な宇多天皇とその皇子にお仕えした雑色(衆)の1人。やはり粋人の周りには粋人が生息する。)
旅の道具で色鮮やかな舶来肉料理を楽しむ、粋なお兄いさんを想像する喜びだってある。
以上は、俺がこないだ京都に足を運んで、墓前に報告してきたことのあらましである。
ふつうの暮らしの中で、家族とねこちゃんを大切にして、ふつうにおいしいものを食べる。彼、よよん君(1978-2002)は、それ{が/すら}ままならない病院の暮らしで、自由を求めて探っていた。
ゲーム、特に「大航海時代」が好きでやりこんで、自分もゲームの開発者になってプレイヤーを楽しませたいと、高校を卒業したのちに入学した大学を中退し、手に職を求めて専門学校に入った。
テキストサイトを開設し、読者を集め、年上の、年下の、友だちを作り、匿名掲示板に出入りもした。ゲームのほかにはコミック、中でも料理関連の漫画が好きで、逢坂の関にほど近い実家には山のような本が残された。
まるで、と、そこで思ってみてもいいはずだ。「俺たちのようじゃないか」
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来年も、俺は敗残兵のたしなみとして、彼の見た夢の続きを生き、季節季節に、京の都まで足を運んでいきたいと思う。ちなみに、俺はいつもid:trick-specさんに感動と感謝を伝えたいと思っているのだが、こんなふうに根が暗いので、うまくいったためしがない。