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illegal function call in 1980s

1980年代のスポーツノンフィクションについてやさぐれる文章を書きはじめました。最近の関心は猫のはなちゃんとくるみちゃんです。

少し古めのスポーツノンフィクション10選+α(野球中心)

id:fujiponさんが熱量の高い紹介文を書いていらっしゃった。

fujipon.hatenablog.com

熱い。大変に熱い。いくつかの作品は俺も読み、いくつかの作品は読んでいない。その通りと思う作品もあるし、少々違う見立ての作品もある。例えば、俺は金子達仁が嫌いだ。でも、すばらしい。

ありきたりなセレクトですが、今回も、「僕が実際に読んで、本当に面白かった」ものを集めてみました。

おそらくサッカーものが先に来るid:fujiponさんよりも俺のほうがおっさんである。ここはおっさんの凄みをさらっと場に並べる格好の機会だ。敬意を評しつつ、被らないように、俺もやってみたい。この25年、本当に「面白かった」ものを並べる。逆にいうと、少ない。相当に、偏っているはず。

けちけちせずに面白いものから書く。

 

監督 (新潮文庫)

監督 (新潮文庫)

 

 1978年のヤクルトスワローズ初優勝を題材に、広岡達朗が愛するジャイアンツに挑んだ戦いを描き切った金字塔。ノンフィクションじゃない? いや、これはノンフィクションとして読むもの。ついつい、そう読んでしまう、実話小説だ。ちなみに、「ストッパー毒島」は、「監督」にヒントを得ているところがある。10.19へのオマージュは知られているが、それよりも、広岡的なものへのハロルド作石の愛に、俺は敬意を評したい。

 

ただ栄光のために―堀内恒夫物語 (新潮文庫)

ただ栄光のために―堀内恒夫物語 (新潮文庫)

 

「監督」を読んだら、あわせてこの2作も読んでおいてほしい。1951年生まれの海老沢泰久少年が1960年代に長島(長嶋のことを海老沢はこう表記する)とプロ野球とともに人格を形成し(決して大げさな表現ではない)、80年代に入っていかに静かに、深く、誰もが大人になるようにして、傷を負ったか。

 いまから15ほど前、プロ野球界は再編で揉めた。渦中の球団が自らのアイデンティティを問わなければならない辛い出来事だった。ま、そう受け止める当事者もファンも多くはなく、流れに任され、飲み込まれ、黙っていったわけであるが。

もし、セリーグ、あるいは読売、「巨人阪神伝統の云々」史観を相対化して、実はもう1本2本の歴史の可能性が日本80年のプロ野球にはあったのだ、という入り口に立とうとする賢明な若い人たちがいるならば、ぜひまず本書を手にしてほしい。だいたいのことはわかる。主役は、鶴岡、杉浦、広瀬、そして大阪スタヂアムだ。中身の詰まった、史料的価値の高い労作である(だいたい長島茂雄は南海に入るはずだったんだぜ。心変わりした長島に驚いた南海が同じ立教大学の杉浦に気持ちを確かめたところ「僕がそんな男に見えますか」と伝えた話など、ノムさんじゃないが杉浦忠は日本最高の投手だ。しかしその杉浦をして稲尾には敵わなかったとか)。

 

野球は言葉のスポーツ (中公文庫)

野球は言葉のスポーツ (中公文庫)

 

 MLBがどのようにして文化として育まれてきたか。日本ではプロ野球がいかに「言葉によって」大切にされていないか。知的に、痛感する。古めのMLBのエピソードが満載でおもしろい。前にも触れたことがあるのでよろしければそちらを参照していただければと思う。

dk4130523.hatenablog.com

敗け組甲子園―ドキュメンタリー

敗け組甲子園―ドキュメンタリー

 

負けていった甲子園出場組の、「そのとき」と「その後」を取材し、爽やかな読み物に仕立てたオムニバス。いまでも手に入るのかなあ。僕がくどくど述べるよりも、こちら(id:Kitajskayaさん)。

kitajskaya.hatenablog.com

個人史的に、この伏線にあたるのが、石川泰司の「消えた男たち」。 

消えた男たち―ドラフト20年

消えた男たち―ドラフト20年

 

当時たしか毎日新聞に連載されていたのを、食い入るように読んだ。これともう1作。山際淳司スローカーブを、もう一球」。 

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

 

江夏の21球」じゃないよ。「八月のカクテル光線」(加藤/堅田)だからね。その流れでいえば、たとえば、今回のドラフトで中日が指名した小笠原だけど。

ここは、むしろ加藤斌に反応したい。あるいは板東英二が著作で一緒にワルをやったとか言及していた空谷泰に(野球賭博でいえば、加藤斌と同郷の栃木出身に、高山勲がいた、とかね)。

板東を引いたのだから江本先生を引かなければフェアではあるまい。江本が嚆矢、板東は二番煎じと当時は漠然と思われたものだが意外に売れ、パート2も出した。そんなこともいまではほとんど記憶されていないだろう。

幾多の引退選手の内幕本の中で、やはりこの2作は面白さでは群を抜いている。というか、江本/板東以外は説教じみすぎ。そんなの野球選手に期待していないって。 

プロ野球 記録・奇録・きろく (文春文庫)

プロ野球 記録・奇録・きろく (文春文庫)

 

話を変えて、広義のノンフィクションということで、記録の見方では、宇佐美徹也は触れないわけにはいかない。

また、同じ80年代から90年代に論陣を張った、玉木のおっさんが、東尾修の麻雀と不可解な投球の二面性に触れて、野球賭博八百長にはほとんど決定的ともいうべき視角を提示している。 

めんどくさいので引用しない(笑)。要は、

 

  • 八百長八百長いうけれど、首位打者防御率1位獲りのために欠場/登板回避するほうがよほどファンを愚弄している。この悪習をなくすためには優勝決定即シーズン打ち切りしかない。
  • 仮に池永やら江夏やら…の疑惑投手が八百長をしていたとして、ファンにそれと気づかせない高度な技術を駆使しているのならば何らいうことはない。
  • ドラフト候補の高校生に栄養費を渡し、女を抱かせる(球団スカウト関係者の)ほうがよほどヤクザである。

 

あたりに集約される。ちなみにいえば、だから、読売の笠原ごときが何をしていようとも、まあ一流ではない証明、俺は別になんとも思わない。鈴木大地は「スポーツの高潔性」を防波堤にしているようだがアホとしかいいようがない。よろしければこちらもどうぞ。

dk4130523.hatenablog.com

閑話休題。昔の「Number」および文春はいい仕事をした。岡崎満義はぜひ回顧録を出版し、いまのNumber編集部にカチコミをかけるべきである。

*

おおむね、以上。

申し訳ないが、サッカーでこれといったノンフィクションに出会ったことはない。それはおそらく、俺が人生の大枚を捧げた、山際淳司コレクションに、サッカーの触れた作品がほとんどないことに理由がある。

というわけで、この記事のおしまいに、だれか、サッカーを描いたノンフィクションでこれは熱くてたまらない、というのがあればぜひ教えてほしい。かしこ。

(だいたい10冊になったよ…ね?)

追伸:船橋まで来てくれれば、卒論用に戦後の日本スポーツノンフィクションの資料お貸ししますw 「Number」1号から、山際淳司海老沢泰久玉木正之、上前淳一郎、虫明亜呂無など。

 

巨人軍陰のベストナイン (1982年) (角川文庫)

巨人軍陰のベストナイン (1982年) (角川文庫)

 

 

時さえ忘れて (ちくま文庫)

時さえ忘れて (ちくま文庫)