「君のことが心配だから」と
いまから45年前に
唐突に押しかけてやってきて
鳴り物入りで飼われたねこ
役に立つはずだったそのねこは
前評判ほどには何をするわけでもなく
押入れで寝
引き出しで寝
背を向けて寝
たまに屋根の上で寝
のどを撫でさせるわけでなく
もふもふしているわけではなく
別段愛らしいわけでもない
動画を撮って投稿する物好きもいない
昭和にYouTubeのあるはずもなく
たいていは失敗に終わる道具を
派手な効果音とともに取り出し
どら焼きを食べ
「やれやれ」という青いねこ
引き出しの先にある未来
のび太君は
君が帰ったあと
いつもの部屋で日に当たり
君との日々を思いながら
ひざを抱えて大人への階段を上ろうとしている